なんか、姉ちゃんは傷付きやすい

姉ちゃんはバリバリのコミュ障なので、バリバリに友達がいない。


「お、あれお前のねーちゃんじゃん!」


だから、下校中に姉ちゃんに出くわすとなんだか申し訳ない気持ちになる。

本を読みながら一人で帰る姉ちゃんと、友達と喋りながら帰る僕。とっくに気づかれているとは思うが無意識に声のトーンが落ちてしまう。


「しっかし、やっぱ美人だよなー。お前のねえちゃん」

やめろやめろ。そういうこと言うんじゃない。

友達の有川はいいやつだけど声がでかい。本人的には褒めているつもりなのだろうが、陰キャを極める姉ちゃんは人前で容姿を褒められることがすこぶる苦手だ。


「彼氏いんの?」

「さあ、知らない」

いるわけないだろ、姉ちゃん舐めんな。恋人どころか友達だってギリだよ。

「いないなら俺立候補しちゃおっかなー」

「ぐえ、やめろよ。気持ち悪い」

「なんで?」

「なんでって」

有川はいいやつだけど察しが悪い。


「友達と姉ちゃんが付き合うとかありえんから。ひたすらにキモイから」

「あ、それちょっとわかるわ。俺も妹いるからさ」

「そうだろ?」

「で、姉ちゃんはどんな男が好みなん?」

わかってないならわかったふうなリアクションとるんじゃないよ。

「写真くれよ」

「やんないよ」

「じゃあ、パンツでいいや」

「もう黙れよ」

「あー、どうしよう。マジで告っちゃおうかなー」

 告らなくていいよ、もう答え出てるから。

 姉ちゃんはパンツのくだりあたりから全速力で駆け出していた。


「ただいまー」

 家に帰ると、ソファに姉ちゃんはいなかった。多分自分の部屋だろう。姉ちゃんはメンタル面が極端に弱いので、嫌なことがあればすぐふて寝する。今日はもう夕飯まで出てくることはないだろう。


 ふとベランダの洗濯物に目がいった。姉ちゃんのパンツはない。

 今初めて気づいたけれど、僕は体に装着されていない状態の姉ちゃんの下着類を見たことがない。いつ洗濯してどこに干しているのだろう。

 

姉ちゃんは、いまだに謎が多い。

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