なんか、姉ちゃんがうなってる
「んー! んー!」
真夜中に姉ちゃんの部屋から唸り声が聞こえてきた。
時刻は十二時半。
怖いって。
どうした、姉ちゃん。
寝るのが大好きな姉ちゃんはだいたいいつも十時には眠ってしまう。大方悪い夢でも見てうなされているのだろう。部屋は二階だし、姉ちゃん健康だし、特に心配する必要はないはずだ。
姉ちゃんの部屋に許可なく入ると怒られる。寝てる時ならなおさらだ。夜も遅いし、気にせずに寝てしまうのが正解だ。
そんなことを思いながら姉ちゃんの部屋の扉を開けてみると、
「……勝手に入ってくんな」
暗がりから、やっぱり怒り声が飛んできた。
翌朝。
朝食のトーストを齧っていたら、姉ちゃんが昨晩の不機嫌さを引きずったまま起きてきた。
「おはよう」
「…………」
「遅くない? 学校間に合うん?」
「…………」
「昨日どうしたん?」
「別に……」
僕の麦茶を無断で一口飲み下し、ようやく姉ちゃんが声を発した。
「……ただ金縛りにあっただけ」
「金縛り? マジか、めっちゃ怖いじゃん」
「はあ? 怖くないし」
共感を示したはずなのに、なぜかキロリと睨まれた。
「全然怖くないし!金縛りは医学的に解明されてる睡眠障害だから!頭だけ起きてて体は眠ってるっていう状態だから!原因は色々あるけどストレスかな、やっぱあたしの場合。心霊現象とか言い出すのマジないわー。一生壺買っとけよ」
………めっちゃ喋るじゃん、朝から。
どうしたんだよ、姉ちゃんよ。なんか変だぞ、今日もまた。
「壺買うついでに、あたしのパンも焼いて。麦茶と氷も早く。いい氷選べよ」
起き抜けから暴君ぶりが止まらない。こんな姉ちゃんに何のストレスがあるというのだろう。
そして、その夜。
「んー!んー!」
またかよ。うるさいんですけど。
姉ちゃんまた金縛ってんのか。二夜連続とか霊感えぐいな。
いや、霊は関係ないんだったか。ただの睡眠障害だっけ? じゃあ、ほっといてもいいんだよな? 昨日起こして怒られたし。もう、ほっとくからな、姉ちゃん。
「んー!んー!」
すっごい気にはなるけど。
「んー!んー!んー!」
死んだりしないよな?
「んー!んー!……ぶつ……」
ん? なんだ、今の。
「……南無阿弥陀仏」
お経唱えとるー!
超ビビってんじゃん!ガクブルじゃん、姉ちゃん。
確認だけど、霊は関係ないんだよな?じゃあ、助けてやらないからな。朝までビビってるがいいさ。
などと思いながら扉を開けると、
「……勝手に入んな」
震え声で怒られた。
姉ちゃんはやっぱり超ビビりだ。
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