なんか、姉ちゃんが異様に強い

「おい」


 ベッドで漫画を読んでいたら、姉ちゃんが部屋に入ってきた。

僕が姉ちゃんの部屋に勝手に入ると怒られるけど、姉ちゃんは普通に入ってくる。


こんな時ヘタに構うとろくなことがない。無視して漫画の続きを読んでいると、

「よっと」

姉ちゃんは僕の上に乗ってきた。


僕はいつもベッドにうつ伏せの姿勢で漫画を読むので、姉ちゃんは僕の背中に腰かけるかたちになる。


「……ふう」

いや、ふうじゃなく。どこで落ち着いてるんだよ。どいて欲しいけど、構えば敗けだ。無視して漫画を読み続けると、


「はっと!」

今度は僕の背中で立とうとして来る。てゆーか、実際に立ってくる。

しかし、無視。姉ちゃんは軽いし、下はマットレスなので、たいして重さは感じない。

「ぐりぐりぐり」

「ぐえー!」

……なわけあるか、重いよ、めっちゃ。

しかも、かかとがちょうど肩甲骨を責めてくるし。


「あはははは、足の裏がくすぐったい!あはは」

なに笑ってんだ。くすぐったいなら下りろよ、早く。


「ズブズブ……」

気の済むまで僕を踏み荒らした姉ちゃんは

今度は布団に入ってくる。

意地でも漫画の邪魔をする気なので意地でも漫画を読み続けると、

「ふん!」

体を使ってベッドの外に押し出された。

「やめろよ、なんだよ!」

「んー?」

なんだろうか、人を床に突き落としていてこのどや顔は。


このまま引き下がってなるものか、ベッドは僕の聖地なんだ。絶対に取り戻すべく、鼻息荒くベッドに乗り込むが、 

「ふん!」

姉ちゃんは布団相撲が異様に強い。すぐに床に落とされる。

「んー?」

もういいわ。

付き合いきれないので、漫画を持って部屋を出た。リビングのソファに腰を下ろして仕切り直す。

「ズブズブ……」

もちろん姉ちゃんもついてきた。

ソファーの背もたれと僕の背中の間に無理やり足をねじ込んできて、

「ふん!」

やっぱり床に落とされる。


「いい加減にしろや!あっちいけや」

「まあ、そう言うなって。もうちょっとだけさ」

……もうちょっとだけ?

「もうちょっとだけ、暇潰させろや」

絶対他にやることあるだろう。


姉ちゃんは暇になると僕を床に落としたがる。

姉ちゃんはやっぱり、我が家の暴君である。


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