僕の幽霊物語

総督琉

僕の幽霊物語

 2020年夏。僕は大学合格祝いに一人で旅館に泊まりに来ていた。だがーー

 起きたら金縛りにあっていた。


「体が動かねー」


 だが目を開けて理解した。少女の幽霊が僕の上の乗っていた。僕は怖かったが、少女に話し掛けてみた。


「ねえ。ちょっとどいてくれない?」


「み…見えてるの?」


 少女は驚いていた。まあ見えてたらこんなことしないだろうからな。


「とりあえずさ、どいてくれ」


「いいよ」


 少女の幽霊はすんなりと退いた。


「で、僕に何のようなんだ?」


「私、夜中に殺されてたの」


「あーあ。よくあるやつな。どうせ恨みを誰かからかってたんだろ」


「いいや。多分別人を殺しちゃったんだと思うよ」


「は!?」


 そんなドジな犯罪者いるのかよ!


「私の見た目がその子そっくりだったらしくて。それで刺した瞬間、犯人が言ったんだよ。やべっ! 間違えたって」


 スゲードジな犯人だな。


「なあ。犯人の顔は見たのか?」


「夜だし、暗かったから見てない。でも声は聞いたから分かると思う」


「そうか。じゃあついてこい」


 そして僕は犯人探しを始めた。


 この旅館には俺とこの少女以外に三名いる。だからその中にいる可能性が高い。


 まずは少女の部屋の真下に泊まってるドラ木さん。


「あのー」


 ピンポンを押しても誰も出てこない。


 帰ろうと思ったその時、


「何かようですか?」


 黒いマントに黒い杖。そして胸元に逆さ十字のペンダント。それに西洋の服。まるでドラキュラじゃないか!


「あの……ドラ木さんですか?」


「はい。私がドラ木ですが……何でしょう?」


「昨日の夜。何をしていましたか?」


「刑事ごっこかな。まあいいけど。わたくしはずっとテレビを見ておりました」


「そうですか…。ではさようなら」


 僕は少女の真上の部屋に泊まってる大上おおかみさんを訪ねた。


「あなた。昨日の夜何をしてましたか?」


「な……な……何って……。自主トレ」


 大上さんは凄く動揺していた。こいつだろ。


 最後に僕は少女の隣の部屋の河童かっぱさんの部屋に行った。


 河童さんは帽子を被っている。そしてマスクをつけている。犯人の服装のお手本って感じだ。


「昨日の夜中、何をしていましたか」


「泳いでた」


「ありがとうございました」


 僕は自分の部屋に戻り、少女の幽霊に聞き覚えのある声が誰だったか聞いた。


「私が聞いた声は……大上さん」


 僕は動揺した。だって僕は河童さんが犯人だと思ったからだ。


 なぜなら泳ぐ場所と言えばこの旅館のプールだけ。そのプールは今改装中で泳げない。だから泳いでたと嘘をついた河童さんが犯人だと思ったんだが……。


「ねえ。河童さんは……どうだった?」


「初めて聞いたよ。それにあの人、本物の河童じゃないの?」


「え!? お前バカなの!? 」


「は!?」


「河童はね、水の中にしかいないんだよ。幽霊はいても、河童はいない。まあ夢を見るのはいいことだぜ」


「ムカッ」


「どうした?」


「何でもない」


「でさ、大上を捕まえるか?」


「まああなたには出来ないと思うよ。だって刑事じゃないじゃん。まああんたが刑事だったら捕まえられたけどね」


「そうだねー。僕が刑事だったら……か~」


「どうした? 頭壊れたの?」


 僕は無言で少女の幽霊を見つめる。自信満々で。


「まさか……」


「実は刑事だったりして」


 僕はポケットから警察手帳を取り出し、少女の幽霊に見せた。


「えーーーーー!?」


 少女の幽霊は驚きのあまり固まっていた。


「ちょっと。幽霊さん」


 少女の幽霊は咳払いをし、呼吸を整えた。


「で、あの男を捕まえるの?」


「もちろん。天才刑事だからね」


 実際は手柄がたまたま転がり込むだけのラッキー刑事なんだけどね。


「じゃあ逮捕しに行くか」


「おー」


 そして僕は大上の部屋に行った。だが誰もいな。


「まさか……」


「逃げてる!」


 少女の幽霊が指差した方を見ると、そこには大上がホテルの自動ドアから外に出る瞬間だった。


「逃がすか~」


 僕は必死に追った。そしていつの間にか港まで行っていた。


「おい。あいつはどこに行った?」


「あ……あそこ!」


 少女の幽霊が指差した方を見ると、大上がボートを使って海に逃げようとしていた。


「海に逃げられたら捕まえられない」


「そうだね」


「おい幽霊。ポルターガイスト的なことできないのか?」


「死んで1日も経ってないんだよ。それでできたら苦労しないよ」


「逆に1日も経ってないのに苦労するの?」


「ってかどうする?」


 大上が逃げるのをただ見てるだけかと思っていた時ーー


 海が膨張し、巨大な波が大上の乗っていたボートを陸まで吹き飛ばす。


「このまま落ちたら死ぬだろ!」


 だが、空を飛んできた紳士がボートの中の大上を救出した。


「さあ。今すぐ手錠をかけて、牢に入れろ」


 よく見ると空を飛んできた奴はドラ木さんだ。


「まさか……ドラキュラ!?」


「正解」


「俺もいるよ」


 海から河童が出てきた。


 僕は大上に手錠をかけ、警察局まで連れていこうとした。だがーー


「ねえ。どっか行っちゃうの?」


「そう……かな……」


 少女の幽霊は寂しそうに言った。


「なあ。俺たちの世界で預かろうか? やっぱ幽霊には人間の世界は難しいだろ」


 ドラキュラは心配してくれた。少女の幽霊は寂しそうだ。


「なあ。僕がもらってもいいんだよな?」


「もらう!?」


「ああ。こいつは僕がずっとそばにいてやりたい」


「だがな、幽霊は眠らない。だからその子が寂しくなるんじゃないか?」


 ドラキュラの意見は正論だ。だけど……たったこの1日が、こいつのお陰で楽しく感じられた。だからーー


「なあ。僕のもとに来ないか?」


「うん。私……君のもとにずっといたい」


「ならついてこい」


「どこに?」


「お墓まで」


 そして僕は大上を警察局に連れていき、僕は出生をした。だから僕は少女の幽霊と住むため、アパートを借りた。


「なあ。聞き忘れてたんだけど……お前の名前って何だ?」


 僕はずっと謎だった少女の名前を聞いた。


「私はくるみ。かわいい名前でしょ」


「かわいいな。じゃあさ、僕の名前も聞いてもらっていいかな?」


「うん。知りたい」


「僕の名前は……つかさ。よろしくな」


「よろしく。つかさ」


「こちらこそ。くるみ」

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