Main Story (3)
視点担当:ハイネ
状況説明:Main Story(2)の続き
*
この少女がどこまで自覚し理解しているのか、ハイネはたまに判断に悩む。
「うーん、アスカ。俺の話を冷静に聞ける自信ある?」
「……内容による」
あくまで嘘をつかないアスカらしい返事だった。
「くどい上に極端な言い方するけど、君ってチアキから生存本能と希望を引き継ついだんだよね?」
「そうだ」
「それで、俺はチアキから破滅願望と絶望を引き継いだ」
「そうだな」
〈エマヌエルの天使と悪魔〉としてきちんとした認識が得られている。
それなら、なぜその矛盾に気づかないのか。ハイネはそれが不思議で仕方がない。この少女は視野が極端に狭い。
「それなら今のアスカは、自らの思想、理念とは反対のことをしていると思わないかい? なぜなら、クレイドル・システムが終わったら。君は消えてしまうんだから。本来なら生きたいと願うべきである君自らが破滅へと向かっている。これはなんていう矛盾なんだろうね」
今まで考えもしなかったらしい。アスカの瞳が愕然と見開かれた。
「逆に、死にたいと思うはずの俺がしようとしていることは、逆に自らを生きながらえさせることなんだけどね」
「そ、それは……」
明らかに動揺したアスカの声。
「つまり、俺たちは互いに生存本能と破滅願望を抱きながら、実際には真逆のことをしようとしている。まぁ、この矛盾ゆえにチアキは破綻したんだろうけれど」
今のチアキを見ていればよくわかる。恐らく現実世界のチアキも自らのうちに眠る真逆の衝動を上手に折り合いつけて割り切ることができなかったのだろう。
三人ともが全員、皮肉と矛盾を抱える。これはなんと滑稽で愉快な物語だろう。ハイネはそう思わずにいられなかった。
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