Main Story (1)
「転」の部分でハイネの台詞いくつか。
*
「あーあ、知らなければずっと優しい夢を見ていられたのに。それで、真実の味はどうだい? ちーちゃん」
「これでわかったでしょ? そして、誰も苦しまずに、気付かずに、みんなクレイドル・システムの中で安らかに死んでしまえるなら、それはとても幸せなことだと思わないかい?」
「人類は疲弊しきっているんだよ。だから辛い現実世界を生きるのをやめて、精神世界に逃げ込んだんだ。辛く悲しい現実から目をそらして、甘く優しい夢の中で生きるために。もうそれからして、生きることを放棄したも同然だよね。それを責める権利は誰にもないと思うけど」
「それでも、踏ん切りは中々つかないからね。みんなで一緒に死にましょう? なんていう馬鹿な集団自殺なんてできないし、提案者もいないし。そもそも政府がそんなこと許すはずもないし」
「現実世界のチアキはどっちの選択もすることができなくて、酷く葛藤していたんだ。ま、こういうゲームを始めるぐらいだから、葛藤なんていう言葉では済まされないんだろうけれど。病んでたと言ってもいいんじゃないかな?」
「チアキにも正常な判断力はなかったんだろうね。だから、チアキは自身の中にある真逆の二つの深層心理を核にして、二つの仮想的な人格を作ったんだ。それが、俺とアスカ。通称、〈エマヌエルの天使と悪魔〉。それらと、ちーちゃんを接触させ、異なる二つの考えに触れて、その末に真実を知った時に、どちらを選ぶのか。その選択を持ってして、人類を生かすか殺すか決めちゃえっていう話。こう言うと身も蓋もないけどね」
「もうここまで来たからぶっちゃけるけど、結局、俺がちーちゃんを好きなのは、俺が持つ思想や思考を受け入れやすくするためだったんだよね。そのための器作りってやつ? 同じように対極の位置にあるはずのアスカがちーちゃんを嫌いなのは謎だけどね」
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