Main Story (3)
視点担当:アスカ
状況説明:アスカとハイネで色々会話パート2
*
(1)
A「〈エマヌエルの天使と悪魔〉……か」
H「ちーちゃんにとって、俺らのどちらが天使でどちらが悪魔になるのかは、勝敗決してわかるところかな」
(2)
「この世界は――っ!」
偽りだと、夢のようなものだと、その事実を口にしようと思った瞬間、アスカの喉に引き絞られるような痛みが走る。声を出したいのにその単語を出そうとすると声が出てこない。
喉を押さえて顔を苦痛にゆがめるアスカを見たハイネが、同情するような目を向けてくる。
「禁則事項に抵触するようなことは、世界の理から外れた〈創造の大樹〉の中以外で一切言えないっていうのが、困るよね。前後の文脈から判断して、それを匂わすようなことは一切言わせてもらえないんだから。この世界の神様ってやつは、よほど狭量と思えるね。おかげで、俺は今まで何度ちーちゃんに真実を言い損ねたか」
この世界が精神世界であるという事実を、〈エマヌエルの天使と悪魔〉である二人はこの世界の中で唯一知っている。だが口にすることはできない。
「ま、君は偽物とか嘘とかが大嫌いだからね。そういうことを言いたくなっちゃうのもわかるけど」
「そういうあなたは本物とか真実とかが大嫌いだからな」
「嘘っていうのはね、真実がわからない限り、真実になれる可能性を秘めているんだよ。そう考えると素敵じゃない?」
まるで夢見る子供のように問うハイネ。アスカは露骨な嫌悪を返した。
「詭弁を言うな」
「そういう君こそ極端だと思うけど。紛い物は無価値とか思ってるだろう?」
すねるでもなく穏やかな声で聞き返してくるハイネ。
それを肯定するでもなく、アスカは悲しげに首を振る。
「……虚しいと思うだけだ。外見だけ着飾ったハリボテや中身のないものは空虚なだけだと思わないのか?」
「俺はとても美しいと思うけれど」
うっとりと魅了されたように告げるハイネにアスカは閉口する。
やがて、アスカは不機嫌に言い放った。
「……私はあなたが嫌いだ」
「奇遇だね。俺も君が嫌いだよ」
「相思相愛のようで何よりだ」
アスカの皮肉をハイネは笑ってやり過ごす。
「ま、立場的に反目し合って当然だけどね。だって、俺らは生まれた時からそうなるよう作られている。赤い糸で結ばれた運命ってやつ?」
「あなたがそんなロマンチストだとは思わなかったな」
ハイネの皮肉にアスカも皮肉を返す。
「俺はいつだってロマンチストだよ」
(3)
「あなたのような破滅願望は身勝手だと私は思う」
「君のような生存本能は無責任だと俺は思う」
未来も希望もなく、生きることに疲れ果てた百万人の命を殺すのが身勝手だというのなら、未来も希望もないような世界で、あり得もしない未来を夢見て、百万人の命を無意味に生き永らえさせるのも無責任だろう。
「だから、そのための審判じゃないか」
それは、この星に生き残る百万人の命を掛けた、最初で最後の審判。
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