世界という名の真実
夢をみた。誰も傷つかない、“しあわせなゆめ”を
■ 現実世界の世界観+あらすじ
星の根源たるエネルギーの源泉、〈オルフィレウスの泉〉のエーテルの枯渇により荒廃した世界、アインシャンテ。
その中で寄り添うようにして暮らす、約百万人の人類の生き残り。
彼らは、大陸に唯一残されたドーム状の巨大な一つの都市に身を寄せ合い、かろうじて生きながらえていた。
都市の外は荒れ果てた不毛の大地が広がるばかり。
人々は、生きる希望も夢見る未来もなく、だからといって絶望しきって死ぬこともできずに、ただ呼吸するためだけに生きていた。
そうしていくうちに、人々は少しずつ、だが着実に病んでいった。
そんな人類のために研究を続けていた科学者のチアキも、また精神的に追い詰められていた人間の一人だった。
彼は、人類にひと時の安寧を与えるために、エミリア・ブラーナの研究を盗み見て、一つの精神魔法を考案した。
残された文明と科学技術を掻き集め、〈オルフィレウスの泉〉と呼ばれる無限補給式永久機関のエーテルを借りたそれは、覚めることのない夢を人々に与え続けるものだった。
生命維持装置である〈オルフィレウスの泉〉との接続が断たれる、あるいは寿命がつきない限り、飲まず食わずでも死ぬことがない。ある種の
その魔法の名を、クレイドル・システム。
しかしそれは、生きる希望を失い、精神的に疲弊し、爆発寸前の鬱憤や先行きへの不安をためていた不穏分子とも呼べる民衆たちを一時的に隔離する政府の目的も兼ねたものだった。
クレイドル・システムの製作途中、チアキは自身に繰り返し問いかける。
果たして、このまま希望もなく生きながらえることに意味はあるのだろうか。
その一方で、科学者としてのチアキは、荒廃した大地が緑を取り戻し、人々が平和に暮らせるような日々が再び訪れるという希望を諦めきれずにいた。
そして、クレイドル・システムが完成。
人類存続のために心血を注ぐ科学者たちと政治家たち、そしてクレイドル・システムを忌避し、反対した一部の人々を残して、残りの人類はすがるようにクレイドル・システムに参加する。
それが、政府の単なる時間稼ぎ――つまり、不穏分子とも呼べる民衆たちを一時的に隔離する政府の目的だと知らずに。
……クレイドル・システムを使う前に、秘密裏にチアキは一つの賭けを始める。
自らが持つ真逆の深層意識を分離――すなわち、破滅願望(絶望)と生存本能(希望)を二つに分け、それを核とした二つのキャラクターをクレイドル・システム内に生成。
そして、自らも記憶を白紙にした状態でクレイドル・システムに参加。
精神世界で現実世界の記憶を持っていない自分と、クレイドル・システムの真実と世界の真実を知る二人を引き会わせ、精神世界で生きる自分が、二人のどちらを好意的に見て、どちらの思想に傾くのかを調べるものだった。
チアキは自らに問いかける。
――絶望の生か、希望の死か。
――嘘の精神世界か、真実の現実世界か。
そして何より、この世界は我らが生きるに相応しい世界だろうか。
最終的に、精神世界のチアキの天秤がどちらに傾くかを審判し、その結論を持ってして、クレイドル・システムに参加した百万人の人類を存続させるか否かを決める。
それは、神様でもない何でもない、ただの少年が始める、最初で最後の身勝手でわがままなゲーム。
※ 以降、「現実世界のチアキ」を〈チアキ〉とし、「精神世界のチアキ」をチアキと表記。
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