魔法――という名の現金
■ 概要
〈創造の大樹〉に接続し、各層に格納されている事象を零層(現実世界)に引き出す技術。
一般人に普及し、運用が始まったのは10年ほど前。
■ 使用手順
プロセスは以下の通り。
① 使用者は〈
②〈ヴァルテン機関〉が使用者の求める事象が〈創造の大樹〉のどこにあるかを特定。受理する。
③ 使用者は〈ヴァルテン機関〉が受理した事象がある場所まで潜り、格納されている事象を零層(=現実世界)に引き出す。
④ 深度と金額に応じた事象が現実世界に反映される。
インターネットと同じで〈通信速度〉や混雑具合、事象が格納されている層によって、現実世界に事象が
また、より強力な事象ほど深い層に格納されているため、現実世界に反映されるまで時間がかかる。
たとえば、瞬間転移をしようとした場合、転移距離が遠ければ遠いほど、深い層から事象を引っ張り出す必要があるため時間がかかる。
個人と法人(企業)が持つ〈法石〉では〈通信速度〉が異なり、法人の方が速度は速い。
■ 魔法の問題点等
金額次第でなんでもできるため、魔法の威力や効果に個人差や優劣のようなものがない。魔力的な概念はなく、先天的な才能にも左右されない。
唯一つけられる差があるとすれば、使用者が魔法を申請して、現実世界に事象が反映されるまでの速度(①~④の手順を終える時間)
格納されている事象には名称(URL)がつけられている。
どの層のどの事象を引き出して欲しいと〈ヴァルテン機関〉により正確に伝えることで、〈ヴァルテン機関〉がその事象を見つけ出すまでの時間が短縮される。単純な事務処理の問題。
しかし、よほど記憶力がいいか、精通していない限り、使用者が〈ヴァルテン機関〉に正しく伝えるのは難しいとされている。
また、使用者の操作技術――〈法石〉を素早く操作して申請手続きを完了させるか――によっても左右される。単に〈法石〉使いこなしているかどうかともいう。
大体の人間は、〈
ただし、〈
使用者が求める魔法と、提供された魔法が一致しないことも多く、未だに魔法使用時のトラブルは絶えない。
そのため、緊急時を除いて魔法は極力〈専門家〉に調べてもらってから使用するよう政府が推奨している。
状況次第ではあるが、緊急事態においては〈創造の大樹〉から事象を買う(魔法を使う)より、人が直接動いた方が早いということもあり得る。
結論、便利なのか不便なのかよくわからない上に、肝心な時に役に立たない(致命傷)
※1) 仕組みとして②と③の間に、「〈ヴァルテン機関〉が使用者に申請された魔法の確認を入れる」というプロセスを入れるべきか検討中。
※2) この仕組みを知る
■ 精神魔法における注意事項
基本的に、人の心を操作する魔法は、医療以外の目的で使用することを禁じられている。
人の注意を逸らす、などの精神にかかわる部分は、事象が起きている時間だけそうなる。一時的に、誰かを好きになるよう仕向けたり、人格や記憶さえも思いのままに変化させることができるが、持続時間は一回につき5~10秒が限界。事象が終わるとすぐにその人の記憶や感情、人格は元通りになる。
つまりは精神を変化させるような事象は、継続的な課金が必要になる。別途、特別な申請が必要。
たとえば「好きな女の子に自分を好きになってもらう」という事象を継続させるためには、馬鹿高い金額が必要となる。
ただし、事象によって心変わりした時の記憶は残る。だが、「好き」という感情は事象よってもたらされたものであり、事象が解除されると、その事象変化によって生まれていた「好き」という感情が消えてなくなり、破局するというパターンが多い。その場合、概ね損害賠償や裁判沙汰に発展する。
しかしながら、人は良くも悪くも情が移る生き物であるため、その記憶に基づいて、相手を自然と好きになっているケースも確認されている。
また、魔法を解いた時点で、事象で「好き」になった部分は消えるが、事象関係なく本当の意味で相手を「好き」になった部分は残る。
いずれにしても、魔法によって「好き」になるよう仕向けていたことには変わりなく、非常にデリケートな部分なため、良識的かつ常識的な人間はメンタル部分の事象に手を出さない人がほとんど。金銭面の問題も含めて。
継続時間にもよるが、人の心を変えることは、人の命を蘇らせることよりお金がかかる。
※1) 具体的な貨幣制度の設定を作って、現実味のある数字を決めたいところ。
■ 魔法の使用料の支払い方法
支払いは〈ヴァルテン機関〉が受理した時点で、自動的に銀行口座から引き落としがかかる。また、口座残高が不足している場合は、魔法と同等の金銭的価値があるものを自動的に〈ヴァルテン機関〉が差し押さえる(宝石、貴金属、ブランド品などの類を瞬間転移で押収)。
全ての財産を差し押さえても支払いが足りない場合、使用者の命を対価とする。
※1) 文明レベルでは魔法の支払い方法をクレジットカード、もしくはプリペイドカードのようなものにするのもあり。
■
「安くて速い」をモットーにする
〈創造の大樹〉の1層――お金もあまりかからず、現実世界に反映されるまでのタイムラグもほとんどない――にある事象同士を組み合わせることによって、3層や4層に匹敵する強力な事象を作り出す、ある種の必殺技。
チアキは苦もなく平然とやっているが、高度な計算と正確な知識が必要で、チアキの兄であるハイネいわく「一般人が実用できるよう
もとは小遣いの少ないチアキが、なんとか魔法を使う際に節約できないかと考えた末にできたもの。
※1) 魔法は並列して申請することが可能。最大申請可能数については、具体的に理由含めて設定を決めたいところ。
※2) 昨今で言うところのストレスフリー(=圧倒的な力を持って相手を倒す、という爽快感?)要素にもつながる可能性あり。
■
〈創造の大樹〉と接続するための端末。現代で言うところの通信端末に該当。
以前に申請した魔法の〈
■ ヴァルテン機関
使用者の代わりに、使用者の求める事象の位置を特定(=検索)し、受理する国家特別公共機関。申請の受理と事象の検索は全て自動で行われ、人間が管理しているわけではない。
■
国家公務員にして〈創造の大樹〉に精通した人間の総称。
※1)現代で言うところの士業(建築士、税理士、弁護士など)に該当。
■ ここまでの世界設定における留意事項(重要)
――以上が現実世界のチアキという少年が作り上げた精神世界の設定であり、現実世界の人々はこの世界が精神世界であることに気づかずに暮らしているという、この物語の世界設定である。
※1) 要するにVRMMO(?)と似たようなもの。
【作者ざっくり所感】
恐らく本作における
現実世界の人々が、そこが精神世界だと気づかずに暮らしているという設定は、定番中の定番。
このクレイドル・システムこと仮想世界が本物であると読者に思ってもらうには、こんながばがば設定ではなく、現実世界以上の設定の作りこみが必要と思われる。
また、真実を知る〈エマヌエルの天使と悪魔〉の二人(参照:)の会話のやり取りには最大の注意が必要。
特に、この仕掛けを本気の落とし穴として利用するつもりなら、直接的な単語は一切使わない方向が望ましいと思われる。
ただし、このオチは作者主観では大して重要ではないので、〈エマヌエルの天使と悪魔〉である二人のやり取りでばっちり読者に気づかせるというのもあり。
しかし、意外性を期待する読者にとっては、展開が読めて面白みに欠けると思われる。そのため、オチがわかってもその後を読みたいと思えるほどの魅力(キャラでも設定でも展開でも)が弱い場合、このオチを意外性として使うのも手段としてあり。
結論:選択の余地がありすぎて、色々がばがばすぎる(致命傷)
〈創造の大樹〉を含めて、上記で説明した〈〉でくくられている専門用語は、世界観の文明レベルによってそれっぽい名前に変更する必要あり。
【言語由来】
ヴァルテン(=Walten):独語より「管理」。
リアン(=lien):仏語より「紐」。
ブレーン(=Narbe):独語より「傷跡」のアナグラム。
オーデル(=Odell):ヘブライ語の「神を称賛する」に由来。
リトティス(=λιτότης):ギリシア語で「倹約・節約」。
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