04

差しさわりのない会話。同じ部屋のなかで。玄関の写真立ては埃をかぶっていくだけ。


いつ壊れるんだろう、


恋人になっても夫婦になってもそれだけで2人の関係が保障されたものになんかならない。


同じ空間を長く共有していればお互いのことがわかるようになるなんてことはなかったし、歩み寄りをしないまま何年も経ってしまったからこれからも変わらないのだろう。

結婚もしたし子供もいないし、ここからもう進む道なんてない。ただ生活を受け流すだけだ。


ただ深く知らない異性と籍を入れれば、確実に世間からの扱いは変わる。約1年前に仕事を辞めても「木戸さんの奥様」として扱ってくれる。求職中のドロップアウトした人間だなんて思われない。既婚者だから。


こういうもののために結婚したんだなと誇らしく思う。


本当は「世間」なんて幻想なのにね。


だったら私の選択は何だったのだろう、何のためにこうして、何のせいでこうなったんだろうか。

誰のせいで。

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いちばんとおいばしょ @Tifanny

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