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現代において、生活していくために何が一番必要だろうか。夕食の材料を買うために訪れたスーパーマーケットで、店内の能天気なBGMとは不釣り合いなことを考えていた。

原始時代だったら狩猟をする力、平安時代だったら家柄。ならば、現代はきっと安定した収入だ。だからこそ女性たちは自ら見た目をもって、より良い子孫を残せそうな色気のある男性ではなく「公務員」という不思議な身分の男性のもとに嫁ぐのであろう。


だから、私は適切な選択をしたのだ。


夫はとても良い人だ。今、手にとっている白ワインのようにどこにでも馴染める人。嫌われない人。

本人も、仕事に対しても人間関係に対しても斜に構えることもなく、だからといって生真面目すぎることもない、明るい人。私にはない良い面を持っている。半年に一回の実家への帰省も積極的に行ってくれる。先週の休みには実家に持っていく菓子折りを


安心に包まれた生活はたしかにありがたい。明日の飯の心配をしなくてよい。これは原始時代の最も魅力的とされた男性にも為しえなかったことだろう。


では、彼は私の愛する人か?と言われるとそうではない。確かに「生活」を私にくれたが、結婚したら結婚したで今ではあの子たちのような「夢みている」時が一番よかったのかもしれない。そう思うと私の「一番いい時期」はいつなのだろうか。いつも私はここではない時間を追い求めている。


私はそのデメリットを理解していなかった。かつて夢中になった映画のように一緒にいて幸せで笑みがこぼれるような男性との日々を紡ぐわけでもなく、憧れのブランドに背伸びをして手を伸ばしてみても想像よりも満足感は低く、結婚したことにより人生の方向性が決まったので自分を変えるための努力にも喜びを見いだせなくなった。完全な安心は、未知への冒険心を曇らせてしまう。


でも夫は不景気と言われているご時世でもきちんと稼いできてくれて、家事にも協力的。なにも、不満はないはずなのだ。

私は適切な選択をしたはずだから。


なにも、   ないのだ。

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