第7話 ゴーレム討伐作戦 2 魔物

「ヒャッホーウ!」


 あれから約一時間が経過した頃。


 何度かの試行錯誤と事故を経て、ようやく! ようやくマトモに走れるバイクができたよ!


 “創造”の効果で、創った物に特効を付与できるのが助かった。


 動かし方は至って簡単。ギヤを入れ、アクセルを捻れば加速する。ただ前世と違うのは、アクセルを捻ってエンジンを回転させるのではなく、魔力変換装置を回し、魔力を動力に変換して動かすというような感じ。


 決して、ギヤすら入れてない状態で、アクセルを捻らずに超加速するなんて馬鹿げたバイクじゃないよ! ホントだよ! 嘘じゃないよぉ……。


 あと、練習の副産物として、何となくだが魔力の扱い方のコツが掴めてきた。あんまり力んだりしなくても、勘でやってみた方が上手くできるようになってきだぞ。制御の仕方はまだ練習中だから、変にギアを入れられないんだけど。


 だから、魔力をある程度自在に制御できるようになるまでは、一~三速で走らせるよ。事故は起こしたくないしね。


 三速は普通よりは遅いといっても、平地で二〇~三〇㎞/hは出せるから、馬車なんかよりは余裕で速い。


 そもそも馬車は、木に引っかかって森を移動することができないし。



………



 木の根が畝る獣道を跳ねながら進み、森の外縁めがけて飛ばしていく。


 しかし……腹減ったなぁ。結構陽が高くなってるし、そろそろ飯にするかなぁ。


 でも、何を食べる? まだ魔物に出会えていないのに……。


「ブギャァァァァァァッ!」


 っと、ナイスタイミング! もしや、今日の運勢最高か?


 普段聞きなれない爆音に驚いたのか、こちらに真っ直ぐに突進してくる一頭の猪。


 急いでバイクを止め、何処からともなく取り出した一振りの剣。


 飾り気のないシンプルなデザインの、取り回しのいい剣……。はい、たった今能力で作りました。その効果もまさに『肉がよく切れる剣』。


 宝物庫の余りもの達よりも確実に切れ味は良い。使ってないから、刃こぼれもないのだ。


 それに、さっきのバイクの生成の経験を生かし、剣に特効を付けた。


 剣を構えて、猪を迎え撃つ。衝突まであと、十、九、八、七、六……今!


「ほいっと!」


 猪の上を取るように、軽く助走をつけて、飛ぶ! そして……。


 グシャッ!

 ……ドサッ。


 ……確実に急所――首――を狙って、この体勢で放てる渾身の一撃を放つ。


 頭を切り落とされ、完全に沈黙した猪。


 よかった。前世とは比べ物にならないくらい動けた。しっかり戦えるみたいだな。


 しかし……なぁ。突然出てきたからよく見てなかったけど、この猪、結構大きいね。一〇〇kgは余裕であるんじゃない?


 よし、じゃあ捌きますかぁ。


 ……よろしくな! 今の俺の身体に染み付いた習慣クン! 期待してるよ!



 ◆◇◆



 直感で血抜き処理を済ませて、薄く切り、“創造”した網の上に並べて、それを直火で焼いていく。食中毒になると怖いから、しっかり焼いていくよ。


 余った肉は、面倒だから次元空間に放り込んだ。


 ……次元空間っていうくらいだし、きっと収納しているうちは時間経過はないよね。

 大丈夫大丈夫。多分……。


 ………


 じゅぅぅぅぅぅ~……。


 おおぉ! 焼けてきた焼けてきた! うんうん! 結構いい感じじゃない? これだけあれば、ひとまずは安心かな。


 いい匂いだ……。これで魔物が寄ってこないといいんだけどね。


「「「グルルルルルルル……」」」


 ……フラグ回収早いねぇ……。やっぱり、今日の運勢は最悪なのかかな?


 現れたのは、三頭の狼。後ろには、多分子狼らしい一回り小さい小さい影もちらほらと見える。


 匂いで寄ってきた肉目当ての群れだよね。肉あげれば満足だよね君達。尻尾振って涎垂らしてるもんね。わかるよ。昔実家で大型犬飼ってたもん。


『『『『『『『その肉を寄越せッ!』』』』』』』

「はいはい、今焼けるから大人しくしてもうちょっと待ってね」


 そう言って、網の上の肉をひっくり返し立ち上がり、近くの木に手をかけ……。


 ガツン!


「なんで! なんで俺は、狼の言葉がわかるんじゃぁ……!」



 ………



 はぁはぁ……。ふぅ……落ち着いた。


 考えてみれば、わかってもおかしくないよね。俺、狼獣人だし。きっと狼って親戚みたいなもんだよね。諦めよう。


「焼けたよ~」

『『『『『『『おおお!』』』』』』』


 見事に焼けた肉を見て、さらに涎をダラダラと垂らす狼達。だらしないよ君達。


 狼達が食べ始めたのを見て、俺も肉を一口……んん!?


『『『『『『『美味い……』』』』』』』

「いやホント、美味すぎでしょ……」


 これは、多分もうちょっと量焼かないとダメだね。狼達もたくさん食べたいだろうし、この肉は美味すぎる。



 ◆◇◆



「はいはいはーい! 第二陣、焼けたよ~!」

『待ってました!』


 開催、突発的な狼達の焼肉パーティ! イエーイ! ドンドンパフパフ! ……ふぅ。


 勿論焼くのは俺だ。狼が焼ける訳がないし。そもそも火に慣れてないから、近づきたくないだろう。

それで、狼君達は少し遠くにいるんだけど……。さっきの肉が余程美味しかったのか、下手すれば俺すら喰いそうな殺意を向けるものだから、メチャクチャ焼きづらかったよ……。


 ちなみに試しに第一陣の時の俺の取り分を四次元空間に放り込み、第二陣の焼き上がりと同時に取り出し、食べて見たらまだ温かかった……というか、熱かった。そのせいで口の中火傷したわぁ……。


 俺の口内の無事と引き換えに、四次元空間の安全性が証明されたわけ。要は口の火傷も、一種のコラテラルダメージ的なものだったって訳だ。そういうことにして痛みを我慢しよう。


「熱っ! でもやっぱ美味い……」

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