原点回帰

 僕は今朝、顔を洗うより先に、あるアニメを観た。そのアニメとは『神様になった日』といったタイトルで、麻枝准の新作アニメだ。

 テーマは麻枝准の<原点回帰>


 今年の春、僕は小説を書き始めた。今まで、読書は好きだが、書くつもりはないというスタンスで触れてきた世界に、天啓に導かれたように始めた。

「麻枝准のようになりたい」

 その想いは、幼い子どもが思い描くそれと一切違わず、純粋無垢な本心そのものだった。


 今年の夏。僕にとって重大な意味を持つ季節、夏。

 自身の作風が確立し始め、その上、代表作が誕生した。あの願いは未だ遥か彼方の手の届かぬ場所ではあるけれど、【入場券】を手に入れた僕は、次の夏に向かって走り出すことが叶った。


 そして秋。この季節は僕にとって、そしてそれは偶然か必然か、麻枝准にとっても<原点回帰>の季節だった。

 少なからずWeb作家としての立ち居振る舞いが身についてきた今日この頃。それは自身の居場所を見出したとも言え、反対に、評価を求める「同人」になったという事でもあった。

 世間的には今の僕のありようは「趣味」と定義されるだろう。

 だが仕事ではないにせよ、僕は趣味と混同されたくはなかった。

 言わば在野研究・ライフワークに近い何かであると思っていたのだ。

 それでもこの環境にいる限り、僕は読者を心から欲していのもまた事実だった。

 大義名分は立派であり、純真だが、その実、僕は作家アカウントを「運営」しているといっても過言ではないのだった。

 質問箱も稼働し、作家Sという存在が僕の影から、一個の人格にまで進化した。


 今こそ僕は<原点回帰>しなくてはならない。

 さもなくば、本来誰しもにあるはずの己の矛盾が過度に気になって押しつぶされてしまうから。

 今まで僕は何もミスは犯していない。

 はっきり言って、現状維持をテーマにするのが大多数の見解だろう。


 だが、ここで今一度、初志貫徹の精神を鼓舞する事で、冬眠せずに、新たなる夜明けにこの身を投ずることができるのだから。

 往々にして、あれほど真剣にお祈りしたはずの初詣の内容は忘れがちだが、僕は幸いこの私記がある。

 その時々の生きた想いがここに宿り、再び<あの夏>に向けて進路を示してくれる。

 調味料はしっかり入れた。料理過程も記録してある。あとはその味を確かめ、本来思い描いていた味と違うならば足せばいい。

 吟味し、その味・香り・見た目を深くするのが、今年の秋。


 僕の私記をしている者がいるなら、僕と同じように、過去の記録を振り返ってみてほしい。

 その時、アナタは何を感じたのかを思い出してほしい。

 それが唯一、時間に干渉されずにできる僕とアナタの邂逅かいこうなのだから。

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