筆の向かう先には
【代表作】が完結して幾ばくかの月日が経った。
しばらくして書き始めた新作は全く手につかず、息抜きで始めたイラストの方が時間を割いている始末。
隔週と言えば聞こえはいいが、つまるところ執筆そのものに意欲が掻き立てられなくなってしまったのだ。
それでも「web作家」というアイデンティティを失いたくない僕は、かつての作品を他サイトにアップロードする事で、可能性にすがっていた。
一種の充電期間としてイラストや読書に身を任せる毎日。勤皇の志士や若者を啓蒙・鼓舞した『学問のすゝめ』に並ぶ明治二大ベストセラー『自助論』を読んだりもした。
天は自ら助くる者を助く≪Heaven helps those who help themselves.≫
その含蓄ある金言を胸に刻みながらも、執筆を再開することはついぞなかった。
インスピレーションを受けたのはある日の昼食前。ツイキャスで気づいた事の一つに、僕は実際あまり小説を読んでいないという事実だ。
『自助論』といった古典には触れているが、現代小説、もっと言えばライトノベルでさえあまり読んではいなかった。
そこでその充電期間を無下にしない為にも、興味を覚えた小説やライトノベルを購入することにした。
ちょうどその頃、一ヶ月程遅れで、叔母が僕に一万円分の図書カードをくださったのだ。実はこの叔母こそ、僕に読書の楽しさを教えてくれた功労者なのだが。
Twitterで人気を誇る作家がいるのだが、ライトノベルの設定自体は全くもって未知なものだった。
だがしかし、その頃の僕はこれまた幸い、アニメ『本好きの下剋上』一期・二期をものの三日で制覇していたのだ。
この作品は僕にとって初めてまともに観た異世界転生ものだった。
web作家としての見解は持っていたが、それらを享受したことは無かったのだ。
それ以来、設定的に未知なものでも、「興味を持った」という第六感をより大事にすることに決めた。
そのラノベはいわゆる「俺TUEEE」系の、実にテンポの良いものだった。
早い話、僕は感服した。「Twitterで面白い呟きをしている=作品も面白い」とはならないかもしれないが、その確率は大いにあり得るということに。
そしてそれは、いつもふざけているような人物でも、真剣に努力しているという至極当然の、それでいながら隠された本質に近いものを感じるには十分だった。
そしてその時、あの新作は没にして、別のものを書こうと思った。
そのテーマはまたもや「ヤンデレ」。実に第四作目にあたる。
だがしかし、答えの無い毎日でひたすら奔走し続けた結果、執筆そのものが楽しいと感じられる、面白いと確信し、傲慢になれる小説が書けるのはやはりヤンデレものなのだった。
別段、ヤンデレヒロインが好きという訳でもない。
しかし、病みという人間の本質が現れる、それも様々な方法で感じられるキャラクター像に気づけば固執していたのだ。千差万別な病み方・その感情の表現法がキャラクターの数だけ存在する奥深い世界。その世界を綴ることへの深い精神的愉悦。
そもそも思い返せば、処女作のテーマがヤンデレであるのも興味深い。
創作とは無からではなくむしろ有象無象からたった一つのテーマを掴み取ることであり、人生初の小説、それも非難される可能性が高いweb小説。その題材にヤンデレを見いだしたその時から、少なからず己の道は見え始めていたのかもしれない。
再び執筆と学習によって体重を10キロほど落としてゆく所存。
悩んだ時は、また何らかのコンテンツで開眼すればいいと分かったのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます