「あの夏」が始まったこの夏~AIR聖地へ~
『どこから来てどこへ行くのか、それが分かっていたら、それは本当の旅じゃない。
本当の旅は、どこから来たのかもとうに忘れ、どこへ行くかもノーアイディアだ。そういうもんだと、俺は思っている』
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劇場版AIRの冒頭で主人公が心の中で語られるこのセリフ。僕は昨日、初めて劇場版を視聴し、すこぶる月並みな感想だが、感動した。アニメ版との違いはあれど、僕に嫌悪は起きなかった。そしてこの旅の開始を閣議決定、いや、勅命であるかのように、最重要事項として対策本部を設立。もちろん構成員ならびに長官は僕一人だ。
旅の予定を決めすぎては、あの冒頭から大きく逸脱するものとなるため、いわゆる聖地巡礼ではいささかならず無謀ではあるが、最寄り駅と海岸だけを調べ、あとは己の運に任せることにした。
ちなみに現時点ではまだ自宅だ。紀行文というより取材に近い手法で心境を述べてゆく所存。
僕の一番の目的はあの海岸、
そして願わくば、神尾美鈴をこの心に写し捉えたい。作品の神髄たるあのヒロインを、有形・無形を問わず享受したいのだ。僕が主人公となることで。
ある種、精神的な懇願ではあるため、人によっては気味悪く思われるかもしれない。
ではこう言い換えよう。森羅万象がすべからく活発化し、あらゆる名作の舞台であると同時に、最大の舞台装置でもある夏。
それが具象化されたものがAIRの海岸であり、そこに訪れるという事は、まさしく聖地巡礼的意味合いを持ち合わせることに他ならないのである。
神道では伊勢神宮参拝が最高位にされるように、僕にとっての創作のイェルサレムはあの海をこの身体全身に感じる事なのだ。
ここで一つアドバイスしておこう。あなたが、現地ではどういう天気模様なのか心配しているとする。
そういった場合には、動画投稿サイトにて「(その土地の名前) ライブカメラ」と検索すると大抵の場合は、生放送として使用できるはずである。なお、煙樹ヶ浜は無かったので、和歌山県で検索した。
少し話はそれるが、真剣ではないにせよ、僕は作家=探偵の資格ありと考えている節がある。作品の名が広まるにつれ時折、「ミステリ作家ではないから、ドラマや本にした場合、どういった題名になるんだろうか。カクヨム作家○○の事件簿が妥当かなぁ」などと空想している。
そして遠く離れたかの地に向かって揺れる列車に乗りながら感慨に耽っている様子を想像すると、さながら浅見光彦だな、と浮かれている。
やはり、そう経験を積んだ訳では無いが、我が人生に最も大きく影響を与えたのは、シャーロック・ホームズなのだ。
創作に関する聖地が和歌山県美浜町であるとすれば、精神のルーツは故郷に勝るとも劣らず、ヴィクトリア時代の大英帝国ロンドンのベイカー街「221番地b」の一室に辿ることができる。
ちなみにドラマ・浅見光彦シリーズでは作者と同じ意見で、榎木孝明主演のものが一番気に入っている。水谷豊も良いのだが。僕もハイソカーを乗り回してみたいと思いながら、おとなしく列車に乗車する。
途中、よく分からない箇所もあったが、別段、コミュニケーションに難はないので、駅員に尋ねる事で事なきを得る。
ここで、なぜこうも突然に旅行を計画したかと言えば、大きく分けて2つの理由があるため、説明しておくとしよう。
1つ目は単純で、夏が始まったから。
では2つ目は何かといえば、新作小説が大いに読まれだしたからである。
言わばその巡礼者としての資格を神より賜り、神権政治の如く大義名分が明確に立ったらである。
「僕は創作からお呼びがかかったのだ。その神託に従って、群雄割拠する投稿サイト内にて下剋上を果たすはそれ、我が
はたして僕は誰から帝王学を教わり、こういうに考えるようになったのか。自分で言うのもなんだが、生まれたその時からある種、神童的に親戚から歓迎され、当時、社長的なポストにいた祖父の後ろ盾もあって、すくすくとこの気質は成長していった。
それを助長するかのように、好意的に解釈されることの多い容姿と、幼少期からの読書習慣による知識欲によって、選民思想とまではいかないにせよ、「余の辞書に不可能はない」といった態度が心の奥底に今なお根強く作用している。
そんな性格だからこそ、歴史を、それも公家・貴族・皇帝・天皇といった上流階級の日本史や世界史を好むようになったのかもしれない。
なるほど、だから僕が日本史で特に好きな時代が、後醍醐天皇による南朝の歴史なのか。天皇でありながら、両統迭立となり、鎌倉幕府を討幕したのも束の間、北朝によって京の御所から出ることを余儀なくされるという、天皇であるのに、下剋上的な成果と失敗の代表的史実が僕を惹きつけているに違いない。
そして今日、
それと、傲慢な話はこれくらいにしておこうか。旅人の心境としてはあまり確固たる信念があり過ぎてもよろしくないなのだ。
自分探しの青い鳥症候群をあえて演じることで、身近な幸福を見いだすという逆算的手法でもって、これからより執筆に明け暮れたいかぎりだ。
海で聴こうと意気込んでいた「鳥の詩」を長い長い電車での時間に使ってしまった。だからこそ、こうやって自分という歴史を露呈し、大海原に晴れ渡る大空というこの大惑星に審判を仰いでいるのだ。
始まったのだ、創作を、自分を見つめ直す旅が。
道中、山々にそびえ立つ風力発電を見て、科学少年だった子どもの頃を思い出した。これもホームズの影響でもあるのだが。
長々と歩いたその先にあの大海原が待ち構えていた。僕は一時間きっかりそこに居座った。海水の冷たさを感じ、強い潮風に髪を乱しながら読書もした。おかげで両腕は真っ赤に焼けてしまった。
回りには誰もおらず、自分をアダムと勘違いしてしまう程の非日常が演出されていた。
さざ波に心を癒しながらも沸き立て、いよいよ発ったにも関わらず、道を間違え、その上スマホの充電もほぼ0となり、モバイル充電器を買うこととなった。
よかれあしかれ、終始一人旅となったが、ネット上の知り合いの方にオススメの喫茶店を教えてもらい、バナナジュースを注文する。
バナナジュースは僕が幼少期、少し家から遠い場所にある洋食屋さんでよく頼んだ飲み物だ。
僕は今日、聖地巡礼を通して、原点に回帰し、創作という小舟に乗ることを改めて決心するに至ったのだ。今までの一人旅とは違い、ネットに公表する楽しさも感じる事ができ、生涯忘れることはないだろう。
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