徹底的に思い出を昇華してゆく

 ドラマ版『電車男』は今見ても、いやむしろが懐古の産物となった今だからこそ面白い。ありふれた一人の男の恋愛ストーリー。それをネット掲示板での友情がそれらを特異なものに仕上げている。言わずと知れたドラマ界の名作の一つ。芸能人や偉人の人生でなくとも、コンテンツ化は可能であることは昔から漠然と知られていた事ではあるが_| ̄|○


 掲示板は利用経験の有無を問わず広くしられており、「なんJ民」としてネタ的に親しまれている。僕は『電車男』も好きだが、どちらかと言えば劇場版『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』の方が好きだったりする。昨今のなろう作品を思わせるが、これは2007年に「にちゃんねる」にて投稿されたものを基に書籍化されたものを映画にした作品で、内容はタイトルそのものだ。偶然見る始めると、そこにはニートがいて、少し経ってから就職したものの、そこは忌むべきブラック企業。そこで繰り広げられる内容それ自体は、クソ上司連中のせいで、あまり楽しいものではなく、主人公がニートであったことからも察せられるように、屈折した人間心理が露呈される。

 僕が当時、まだまだ子どもだった時分に、なぜそんなものが面白く・興味深く感じたのかと言えば、やはりネット掲示板で語られるという構図や、そもそもネット文化という未知の領域に関する羨望が比重を占める。


 ネットでの人とのかかわり。ぬくもりなんてそうそう感じることはできないが、本音で語り、矛盾するが自身にとっての理想の姿を想定して振る舞うことも可能な自由な世界。

 今日こんにちの僕は、それまでに鑑賞した数多ある名作から享受したあの感動を、今度は自らの手で創り上げようと意気込んでいる。それまでに観た・読んだ作品はまだまだ作品に反映できていないのが実際のところだ。

 ポケモンセンターに行き、あの頃の自分に戻るために「レアコイル」のぬいぐるみを買ったりするなど、日々懐古主義に突き進みつつある。そういった感覚を確かなものとし、そこでようやく新たな作品を鑑賞し、最後にそのエッセンスを自作に活かす。

 その創作三段活用をこのネット社会に参入して初めて知る事となり、嫌悪を抱かせなかった、順応できた要因は、ある種の英才教育とも言うべき、掲示板文化を取り扱った作品の鑑賞に大きく起因するものであるのだ。

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