第二章
下剋上 前夜
ビッグスターは一夜にして成りあがる。下剋上は始まった。
比較対象が今までの自分の作品群しかないために正確なモノではないかもしれないが、「一番人気」「抜群の伸び率」をみせる新作が連載開始された。問題は、自分の作品を比較対象にしても分らない事が多すぎる点にある。テーマや会話の雰囲気が今までの自分のものとさして変わらない気しかしないのだ。
一般的に考えればやはり何らかの違いがあるのだろう。「名が少しずつ売れていったから」だけでは全くもって不十分である。
兎にも角にも舞台は整った。書籍化などはどだい無理難題であることに変わりはないが、広告収入を換金できるステージに上りつめるやもしれず、ひいてはランキング上位に掲示される事も可能かもしれない。今こそ正念場なのだ。「継続は力なり」を実証してみせる。他の誰の為でもなく、自分自身のために。
そのためにも今は書き続け、今こそこのある種成功例となりつつある新作を分析しなければならない。失敗から学ぶことは世界各国・天下万民が既に行っている。しかし、成功から学ぶことのできる人間は偉人を含めてもそう多くはない。今感じている、鬼の首を取ったような傲慢さを底力に徹底的に考え抜かねばならない。
処女作には当てはまらないが、つい数日まで一番人気だった作品との共通点を僕は見つけた。そしてそれは、昨今の風潮とも見事に合致する。
【タイトルから内容が分かりやすい】
なんだそんな事かと思われかねないのは重々承知だ。しかしそれまでの僕の題名と言えば、作風を表してはいるものの、内容が分からず、そもそも読もうとされないという事実があったということだ。
ある人は「AVのタイトルを参考にすればいい」と言っていたが、まさしくそういうことで、属性のはっきりしないものを消費者はそもそも手を出さない。初期動作に作品の巧拙は全く関係ないのだ。
これは絵本業界にも通じるものがある。往々にして、我が子に買い与える絵本とは、自分が幼少期に読まされて面白かった本であり、権威主義とも言うべき構造になっている。それ故、自分の作品を売り出すにはある程度のネタバレが必要であるという。
少年漫画などまさしくそうで、読者は「そうはいってもどうせ勝つでしょ」と思ってはいるが、そこに至るまでの過程などを楽しむ。
気取った表現は作中で済ませておくべき。それが今分かった最たるものである。
『魂のルフラン』を聴きながらそう結論付け、一人悦に入るのだった。
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