オアシスのその先へ

 妄想の具現化。ひたすらに「これは面白い」と自らが第一のファンとなる事で、その熱量が作用し、読者を惹きつける一助となる。これは歴史的には、かの悪名高い演説のカリスマ「アドルフ・ヒトラー」がその実例である。そして遂に、書籍化とまではいかないが、読者は日々増え続け、酷評ではなく、他ならぬ僕と同じように、それらの作品を称賛してくれる。

 かつては晴耕雨読・行雲流水をモットーに、進んで世捨て人とならんと志していた我が身は何処いずこ。これ程までに精神性に適合し、それが多少なりとも報われる世界の存在を僕は信じていなかった。ややもすれば、今なお信じ難い現象である。事実として僕は孤独にコンピューターに向かい、ブルーライトに自身から浴び、目を酷使してきた。しかし、そうすることによって僕はようやく、約束の地カナンをこの目に見たのだった。

 確かに二次元という理想郷は存在しない。これはれっきとした事実である。だが、桃源郷が存在することもまたなのだ。そうでなければ僕の周りにあるネットを中心とするこの世界は何なのだ。


 執筆という孤独な作業。加藤恵や霞ヶ丘先輩、そして英梨々たちのいる「blessing software」とは違い、一話が完成し投稿ボタンを押し、その上、一人にでも読まれなければ報われない。

 一人、また一人と読まれ、感想を伝えてもらう。場合によっては、作品外で知り合う方もいる。

 この孤独から世界へとダイレクトに繋がる快感。これが今を生きる僕にとっての醍醐味であり、「生きがい」でもあった。今はひたすらに書き続け、脆い自分という存在から、いち早く飛翔したかった。

 時間的余裕・精神的余裕は往々にして減っていく運命にある。もはやそんな事に気を遣う・時間を割くべき段階にはいない。

 着実に僕は前に進んでいる。たとえそれがいばらの道、曲がりくねった道であろうとも、前進に違いはない。

 この夏を、かつて憧れた作品たちの絶頂期・転換期であるのように迎えられるかもしれないわずかな希望を抱き、更なる挑戦の場を探し求める。

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