あの夏の日がすぐ側に

 2020年の7月、Keyアニメ『Charlotte』は放送開始より5年目の月日を迎える。


 鍵っ子として、作家志望として僕はもう一度見直す事にした。引きこもりが推奨されるこのご時世だ。アニメマラソンは多方面から賛辞を受けて然るべき覇業。なんの引け目も感じることなく、僕はディスプレイに釘付けとなる。


『引くな!!』

 部屋に佐倉綾音さんの声が響く。友利奈緒という人格を通して。


 声優というのは実に不思議だ。あまりアニメを観ない人ならいざ知らず、ある程度の作品数を経ると、簡単に声優が誰か分かる。それほどまでに特徴的で、個性的なのだ。

 しかし世間的イメージでは、「七つの声を持つ」と言ったようなフレーズが度々押し出され、全く違う声質であるかのようにされている


 つまり何が言いたいかと言えば、同じ佐倉綾音であっても〇〇と友利奈緒は全く別であるかのように錯覚させる力があり、それは麻枝准のみならず、世間一般の書店に並ぶ作家が意図も容易く成し遂げる力でもあるのだ。無論、容易くない可能性もある。


 同じ人間から発生した作品であっても、全く違うモノとして成り立っている事が、何よりも求められるのだ。

 その点から言って僕は三文作家と言われたとしても、それだけでマシなのかもしれない。文章の構造の本質は、何度新作を造ろうとも、変わらない。

 だからこそ、人気が得られないのだ。


 だが、変えられないなら、磨けばいいのかもしれない。

 そうだ、どの方面へ向かっても未熟なら、今この文体を極める他に手はない。

 少しずつは近づく。桜はブラック・ジャックを彷彿とさせるが如く、半分ピンク、もう半分が緑となっている。五周年を迎えるその日まで、僕は「青春」を追い求める。

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