11
「佐々木先生について、教えて」
大塚さんと別れてから、ぼくはシスタークロエがいる教頭室に来た。
シスタークロエが顔を上げる。手元には、『韓流スター特集号』の雑誌。なるほど、だらしない顔の原因は、それか。
修道女って神様だけが恋人のはずでしょ? ぼくがそう指摘しても、神様はお心が広いからきっと許し手くれるわ、なんて言ってイケメンあさりに精を出すシスタークロエは、修道女としてはどうかと思うけど、だからこそ、こういうときには頼りになる。きっと、この学園で働いてるイケメン教師にも
「あら、どうしたの、真剣な顔しちゃって」
「何か知らないの、佐々木先生の好物とか、趣味とか」
「それ聞いて、どうするの? あ、待って、彼女に教えてあげるのね」
「だから、勝手にぼくの頭の中のぞかないでってば」
「そうねぇ」
ぼくの文句を無視して、シスタークロエは考えに沈む。
ぼくの扱いがひどい。いつものことだけど。
「あ」
おっと、何かを思い出したようだ。
「甘いものが好きだって言ってたわ」
「なにそれ、漠然としすぎ」
「たしか、クッキーが好きだとか」
「ほかには?」
「趣味は読書」
「好きなタイプは?」
「二つ結びの女の子が可愛いって言ってたわね」
なるほど、なるほど。
やっぱり、情報収集する相手にシスタークロエを選んで大正解だ。
思った通り、佐々木先生はしっかりマークされてる。
「そんだけ知ってて、なんで佐々木先生を落とせないんだよ」
シスタークロエが佐々木先生と付き合ってくれてれば、大塚さんと佐々木先生はうまくいかないっていうぼく言葉が嘘にならずに済んだのに。
完全な八つ当たりだって、わかってるけど。そう思わずにはいられない。
シスタークロエがむっとする。
「彼はお子様だったのよ。私には釣り合わないの。そうね、高校生がお相手なら、ぴったりかもね」
今度はぼくがむっとする番だった。
「せいぜい頑張んなさい。タイムリミットまで、あと9日よ」
「わかってるよ」
「彼女と佐々木先生をくっつける、なんて、あなたにできるのかしら? ラブラブしてる二人の姿に耐えられる? このまま死んだ方がマシだって、思わない?」
にやり、と赤い唇がぼくをあざ笑う。
本当に、シスタークロエはひどい。
せめてもの反撃に、ぴしゃんと音を立てて教頭室の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます