第48話 5/8-A トランプの「スピード」
ちょっと待て何でそれで我々が未だに百人一首をやっているのだ?
いや正確には百人一首の絵札を使った坊主めくりとか金取りだけど。
ともかく昔よくやったんだよなあ。で、一番強かったのが向こうのにーさん達。どんどんこういう遊びから抜けてったのも彼等。
何せ彼等は雨が降ろうと槍が降ろうと、友達のところへ行く自転車の足は止めなかったものなあ。
フタバ姉とイツハちゃんは何だかんだ言って長いことつきあってくれてた。
ただイツハちゃんの方が先に抜けた。彼女はそのうちパソ買ってネット友人と話すことの方が多くなった。
フタバ姉はまあ何だかんだで「つきあってくれた」。このひとは遊んではくれるけど、何考えてるのかワタシにはわかんないひとだった。
「フタバ? あーだってあのひとは昔っからよく男居たじゃん」
そう奴は言うが、ワタシに判るかっての!
「あ、ちなみにフタバはアタシ等のこと気付いてたぞ」
「ゑ? いつから?」
「アタシ等が高校ん時」
「そんな早く?」
「いや男と何度かくっ付いたり離れたりしたのも、あいつ中学の頃からあったぞ」
「そんなん知らんー!」
「うん、お前がそーいう奴ということはよく知ってる」
当然という様にうなづかれたので一発はたいておいた。
「それよっか次お前」
ちなみにそういう会話をしていたのは坊主めくりをしながらだった。
何だか知らないが、ワタシ達はこれとトランプの「スピード」にはまるとしばらく逃れられなくなる。
ちなみに先日のガキども加えてのそれは、大人げなく二人ともマジになった。
ババぬき・七ならべ・神経衰弱・ダウト・ポーカーという全国的定番に加え、よく判らないけど親だか誰かから教わったという「スピード」。
何か知らないけど、これは結構ガキも大人も(いやお前が特にだ、と奴が言ってる)なくはまってしまう。どんどん次の「数」を順番もへったくれもなく出していき、先にカードが無くなった方が勝ち。
この「順番なし」がミソなのだわ。超シンプルなルールに、より早く反応した方が勝ち、というのはやっぱり燃える。
実のとこ、定番ってのは単純といや単純なんだが、頭を使おうと思えば使える。のだが、これはともかく反射勝負なのだ。これはもうガキの時代しか真面目に付き合ってもらえない。
……で、まあ本物のガキ相手にマジになってしまったという次第さー。
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