第49話 5/8-B 百人一首の「金取り」

 坊主めくりと金取りというのはアタシ等の百人一首を使った定番遊びだけど、アタシは「金取り」の方が好きだった。

 ということで今はそっちをやってる。

 座布団で向かい合わせになって、絵札裏にして広げまくって、絵柄で価格をつけてる。

 まーレア度が高いのが高い訳だ。

 一番高いのは「お姫様で台座が色つきの奴」。持統天皇と式子内親王だ。これが100円。

 次が「台が色つき」。まーナントカ院とか何とか天皇とかついてることが多い。それが50円。

 その次が30円。「矢をかついでるの」。

 次が坊さん。10円。で姫さんが5円。

 そのうちに入らないのが1円。

 で、それをひたすらとってって、最後に高いのが勝ち。そんだけのゲーム。

 だけど絵がついてるから楽しかった。

 まあこいつに言わせると、「持統天皇がこの衣装の訳ないよねー とか、「蝉丸は法師は法師だけど琵琶法師だしなー」とか色々。

 アタシは和歌の方は判らないので、お姫様は皆お姫様にしか見えない。

 だけどこいつには「これが源氏の作者ー」「こっちは枕ー」「このひとは何とか親王と最初関係があってねー、亡くなったらその弟の親王とまた関係したんだよー」とか解説入れてくる。

 なんだがすぐに忘れる!

 つか! 名前が面倒すぎるんだよ!

 坊さんはいいんだよな、まだ**法師とか多いし。

 で、またこいつがそれを解説できちゃうんだよ。


「参議篁ってあるけど参議ってのは仕事の方の職務でねー、本当の名は小野篁だからねー」


 だの、


「紫式部と和泉式部は親戚じゃないって! それは職場で呼ばれる名で、本当藤原の何とか子って名があるんだってば!」


 とか、


「あ、ちなみに紫式部日記には清少納言の悪口が書いてあったりするんだよー」


 ってことも付け加えたりする。


「だけど何でこの二人だけお姫様で色つきなんだよ」


 一番のレアキャラ二人について聞いたら、


「だって女性の天皇と、内親王だし。いや、何とか皇女とか色々歌集に歌はあるんだけど、持統天皇は奈良より前のひとだし、式子内親王はもう鎌倉だったかなー」

「長いよ!」

「だからレアキャラなんだっての。あ、そんで持統天皇ってのはこっちの天智天皇の娘でその弟の天武天皇の奥さんで」

「おじさんと結婚かい!」

「いやその時代異母きょうだいはおっけーだったぜ」

「ルーズだなあ」

「つか選択肢が少なかったんだよー」


 ……つまりこいつの説明を聞きたいがためにアタシはこのゲームを延々やってるんだよな。ははは。

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