第10話 4/16-B 動線のおかしい台所
カレーを食って眠くなったにも関わらず根性で戻っていった奴はさすがに今朝は顔を出さない。
だいたいこういう時には朝が遅いんだ。
そんでこのまた風の暖かさだ。陽が弱いからまだいいけど、照りつけたらまたあいつは死ぬな。
そーいえば雨が降った後だから草取りって話はどうしたんだっけ。
とりあへず行ってみっか。
ざるはあと縁を巻くぶんだ。そろそろ石箕の方にも取りかからないと。
とか何とか考えつつ。
奴の家までの間は舗装されてるとことそうでないとこが半々。舗装されてても脇にクローバーだのタンポポだの咲きまくり。
昔はれんげもよく見たんだけど、田んぼが減ったら一気に消えたなー。
仕方ないけど。
クローバーとかれんげってのは畑や田んぼのためにわざわざ生やしておくもんだしなー。
そんでたどりついた奴の家。
うーん相変わらず戸締まりという概念がない奴め。まあ人のこと言えんが。がらがらと重いガラス戸を引く。
「ユクー」
「何ー」
「入るよー」
「おー。あー、コーヒー呑むー?」
そう言えばだいたい十時だ。そういう香りがしないでもない。あいつは起きてりゃお十時もする。
「呑む」
どすどすと入ってく。相変わらず散らかってるもんだ。
けど下手に動かすと判らなくなるらしいんで、「たすけてー」とマジで言うまでは放っておくことにしてる。ちなみにこの数年で四回あった。
段ボールだの紙だのの合間をすりぬけて行くと、台所のでかすぎるテーブルに作業と朝メシが同居してた。
この家の動線はおかしい! と街に出て建築業の端っこについた兄貴が言ってたことがある。
「何で四畳半の台所で、食器棚つけてこのテーブル置くんだ? 動けないだろうに」
うん兄貴それは全くだ。
おかげでこいつの家には結構沢山のでっどすぺーすとやらがある。ワタシのせいじゃい、と奴は言うが、変えない以上、お前も半分加担してるぜ、と言いたくなってくる。
ともかくその「四畳半にしてはでかい」テーブルをどん、と真ん中に置いて、椅子を二つだけにして、片方で作業、もう片方でメシ食ってるらしい。
で、アタシが来るとそのメシ食う方が定位置となる。
「で、お前寝た?」
作業はなかなかにハードだった様だ。送られてきたコピーらしいものにこれでもかばかりに24色の色鉛筆で言葉を分けまくってる。
「これから」
「そっかー」
ともかくそう言いつつコーヒーをずるずると呑む。
……って言ってるうちに寝そうだぞお前。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます