第9話 4/15-A 午後
散々汗をかかされた挙げ句、いつの間にか寝てたらしい。はあ。
気付くとTシャツ短パンの上にふとんがかかってた。んでそれがぐっしょり。ちょっと汗かかせすぎだボケ。
しかし確かに頭も身体もすっきりした。汗が引いて熱を持った身体も冷めた。ありがたや。
ふと時計を見ると午後ももう二時過ぎじゃないか。ふすまを開けると、作業してる奴が逆光で目に入ってくる。
「ワタシ帰るー」
「おー」
「帰ったら仕事するー」
「そっかー」
背中で返事。まあいいか。あいつの仕事時間取っちまったからな。
戻ったらアレだ。空もちょっと曇ってきたし、風も出てきた。ちょっと風向きが変わったかな。雨になるとは言ってなかったけど。
何が残ってたっけ。先週教授が送ってきたテキストデータは五作ぶんあって、その中の使われている固有名詞を全部チェックして表にまとめて……
うがぁ。二作で結構しんどくなったんだった。
仕事と割り切っても内容までつい読んでしまうってのは活字好きの悲しい
ともかくTシャツの上に上着を羽織って、入ってきた窓の方へと向かう。サンダルもそこにまだ放ったまま。
「そーいや、今日メシどうすんだ?」
後ろからちょいちょい、と背中を指がつつく。途端、朝の熱が少し戻ってきやがる。だがそれは振り切れ自分!
「今日はウチで食う。ちょっと集中するわー」
「今日ウチカレーなんだけど」
「い゛っ」
さらっと言いやがったなこいつ。さらっと!
人数の居る家庭のカレーは…… 美味いんだよ…… しかもこのウチのは…… 野菜がまた! じゃがいもがごろごろしているんだけど、そのいも自体が美味いし…… そろそろ時季的にはあれが入るこれが入る、と頭が勝手に記憶を!
肉は…… そうだ、昨日頼まれた中に、確かにごろごろした豚肉が大量にあった。あれかああああ!
「あと、ねーさんが久しぶりに牛乳寒天作るって言ってたよ」
「牛乳寒天!」
「うん。ミルクゼリーじゃねえぞ」
この違いは…… でかい……
ミルクゼリーも好きだ。ガキどもはプリンのほうがいいー! って言うから、その中に更に卵入れてるけど!
「あ、ゆで卵幾つ入れるって聞いてこいって言われてた」
「それもう食う前提じゃねえの!」
「うん」
「……」
「違うの」
「……違わない」
カレーは正義だ。
「だけどー! カレー食うと眠くなるんだよぉぉぉ!」
これが三十路というものか……
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