第2話 4/12-B

 三十路だよ!

 考えてみればそうじゃん!


 って顔をあいつがしていたけど、まあそこんとこは見ないことにした。

 いやそれを言うとだな、同級生だったアタシが早生まれだったからあいつより殆ど一年違いだったってこと思い出すしなあ。


 ふぁー。

 考えてみればー、もう二十五年がとこのおつきあいなんだぜ。

 幼稚園で同じクラスになってからずっと一緒なんだぜー。

 いや、いちおう隣なんだから、どっかでばーちゃんに連れられて集まってたとこで遊んだかもしれないけどさあ。そこまで記憶にはねえな。

 そんで、アタシ等はあっちこっちの町からかき集められた子供ばっかの幼稚園だったから、知らない顔だらけ。

 そん中であいつはもう! 一番ぼけーっとしてたんだっ!

 手引かなくちゃ転びそうだったんだっ!

 ということで、気がつきゃ小学校でもそんなことしてましたよ、全く。

 小学校は幼稚園とは違って何故か小さめの分校みたいのがあってなー。六年間いっしょでさ。イマドキのいじめする程のギスギスできるくらいな数もなくってなー。

 そもそもそこは歩きで通学だったから、……ガキどもとしては帰りの野っぱらで遊ぶのが楽しくって、からかうくらいはあっても、いちいちエネルギー使うアタマと体力なかったんだよなー。

 だいたい帰りゃみんな家の手伝いだったから、陽が暮れるまで遊ぶのがデフォだわ。

 帰っても家じゃまだ色々作業してるし、時には代わりばんこで夜中も作業に出かけるくらいだから、そのスキを見つけてごはん。

 ついでに言うとアタシのとこは五人きょうだいだから食いっぱぐれしないのが精一杯だったぜ。……おかげでアタシはメシに執着するようになっちまったぜ……

 ところがまあ、あいつぁそういうとこではちょっと変わってて。

 分家しんやで勤め人の家だったからかなー。朝早く車でおとーさんが出かけてくのを見送ってから来るって言ってた。

 一応お隣…… つか、アタシ等の隣ってのは近くて二、三百メートルは離れてるんだけど。


 小ぶりな家でなー。

 裏に里山があって、あいつのとこにもちょっとした畑もあったんだけど、あの本が壁にずらりとあるのはびっくりだったなあ。おとーさんが帰りに買ってくるようなひとだったって聞いたわ。


 だからだろーなー。あいつが高校から家出て下宿したの。アタマ良かったし。アタシは一番近い高校行ったあと家のしごとだ。

 あいつは大学行って就職して、それから戻ってきたんだ。

 家に誰もいなくなったから。

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