第24話押し殺された感情

「熱いぃいいたいイいいィィイイ。クソォ!!!おとなしく、くたばってろよォォ。」

レーザーが当たった部分(右腕)が消し飛んでいる。

「体の大部分が磁場の乱れで構成されているお前にとって、この”最強レーザー砲”は相当効くはずだ。収束性のある電磁波を食らったお前の右腕は、もう復活することはない。ここでくたばれ。」

もう一度引き金を引こうとする。

「やめろォォ。....................アハハッ。もういいや。後で殺してやろう。うん!そうしよう!」

そう言うとクアは霧のように消えていった。

「逃がした.....か。」

先輩はその場でたおれてしまう。


「大丈夫ですか!?先輩!」

「大丈夫......と言いたいところだが、ずっと味方だと思っていた人が......実は敵だったというのは.....相当答えるな。」

まさか、さっきの話を聞いていたのか?

なにか言わなければ。

慰める言葉を掛けなければ.....。

だが、なんと言えばいいのだろう。

掛ける言葉が見つからない。

「多分この私の記憶も.....アイツによって植え付けられた、偽物の記憶なんだろうな。ばからしいな。しずえなんていう人物も、本当は......。」

「偽物なんかじゃないですよ!!」

咄嗟に言葉が出る。

偽物なんかじゃない。

そんなことあってたまるか。

「その記憶は偽物なんかじゃないです。」

「何言ってんだ。現にアイツは....。」

「偽物なんかじゃないです!もしその記憶が偽物だったら、そんなに涙はあふれてこないはずです!」

「なみ.....だ?」

自分が泣いている事に、気づいていなかったようだ。

「本当だ....。泣いている。.......悲しいのかな?」

「本物だから、悲しいんですよ!」

そうだ。

根拠はないが、そうに違いない。

「なんだよ....それ.....。意味不明だ......。でもそう....だな。....。.....ごめん。少しの間一人に....してくれないか?」

俺は無言で厨房の外に出る。

所詮、最近出会った人間の言葉では、先輩の心を癒やすことはできないのだろう。

自分の無力さを痛感する。

「しず......え。うっ。ううっ。うっ。」

人の気配がしない家の中で、悲しみに満ちた響く。

........アイツだけは許せない。



「さっさと行くぞ。」

「どこへ行くんですか?というか先輩。もう大丈夫なんですか?」

まだあれから、30分ぐらいしか経ってない。

「大丈夫なわけないだろ.....。だがこのままめそめそして、アイツに殺されるのを待つのは嫌だしな。......それに、こちらから奴を叩いた方が勝率は上がる。」

「叩く?クアの居場所に心当たりがあるんですか?」

うなずきながら俺の質問に答える。

「もちろんだ。昨日となんら予定は変わらない。さっさと準備しろ。」



間遠先輩と富田は、榊原さんの寝室で倒れていた。

「フム。よかった。死んでいないようだな。」

息はある。

でもこの状態では、当分目を覚ましそうにない。

「クアの狙いは私のようだからな。私から離れていた方が安全だ。.....こいつらは置いていく。」

確かに俺や富田や間遠先輩は隙だらけだったのに、殺されていない。完全に先輩だけを殺しに来ているということか。

先輩が申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げる。

「すまないが、お前には手伝って欲しい。私だけでは、すぐ殺されるのがオチだ。巻き込んでしまって申し訳ないが、........お願いします。」

先輩が頭を下げながら、俺に対して敬語を使う。

もう二度とお目にかかれない光景だな。

先輩の柄にもない姿に思わず吹き出してしまう。

「おい!なに笑ってんだ?ま、まじめに話していたっていうのに....。」

顔を真っ赤にさせて、俺を睨む。

「すいません。ちょっと面白くて....。」

「フンッ。まあいい。その....なんだ......。ありがとな。」

その時、先輩が少しだけ笑ったように見えた。

気のせいかもしれないが.....。









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