第22話悪夢

「な、なるほど。そういうことか。勘違いして、悪かったな。.....しずえの奴....私をからかいやがったのか。」

なんとか先輩の誤解を解くことができた。

「分かってくれて良かったです。」

「明日は午前6時から、例の地下室へと出発する予定だ。寝不足にならないよう、今のうちに寝といた方がいい。」

明日は水曜日。平日だから学校があるはずだが。

「学校はどうするんですか?」

すると先輩は微笑を浮かべながら言った。

「そこんところは安心しろ。お前も含めて部員全員、明日は休みって学校の方に連絡してある。」

学校をサボるってことか。少し罪悪感にかられるが、緊急事態だし仕方がないよな。

「じゃあ、おやすみなさい。先輩。」

「おやすみ。」

こういう感じで長い一日は幕をとじた。


4月26日(日)?

ジリリリリリッ。目覚まし時計が朝を知らせる。

~8時ジャスト~

やばい!寝過ぎた。今日は6時に出発!とか言ってたよな。遅れた!


........あれっ?この部屋は......。なぜか自宅の部屋にいる。先輩の家にいるはずなのだが....。なんで帰ってきてるんだよ。訳分かんねぇ。

ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。

インターフォンが鳴っている。

朝からいったい誰だ?

ガチャリ(ドアを開ける音)

「こんにちはあ!」

その見覚えがある顔に戦慄する。

「お前.....クアか!?」

ドアの前に立っている男は、口の端っこをつり上げながら返答する。

「そうだよおー。クアだよおー。なんで君死んでないのおー。......心臓つぶしたはずなんだけどな。」

そう言うと、俺の部屋に無理矢理入ってきた。

そこら辺にあった金属バットを構えながら、俺は質問する。

「また俺を殺しに来たのか?」

「違うよ。今回は話に来ただけだよおー。」

「話だと?」

こんなサイコ野郎が、話をしただけで帰るなんて考えられない。

「君さ....。あるべき世界のあり方を知っているようだねえ。」

「あるべき世界ってなんだ?」

そういえば、こんなこと前も言ってたな。

「君が知っている普通の世界さあ。......この地域の”人間”の記憶は正常じゃくなくなったはずなんだけどねえ。」

こいつの話なんてどうでもいい。どうにかして逃げられないか?考えろ!

「逃げようとしても、無駄だよお。一歩でも動こうとしたら殺す。」

くそっ!なんなんだ!こいつ。さっき殺さないとか言ってたのに、すぐ手のひらをひっくり返しやがった。

「それにしてもお、君からはボクと同じ匂いがするねえ。なんでだろうねえ。」

ニタニタとした笑顔を顔に貼り付けながらしゃべっている。

「君さあ、明らかに異常だよねえ。前の世界のことも知っているし、心臓潰されても生きているしねえ。本当に人間なのかなあ?」

「お前よりは普通だと思うが?」

だが、奴が言っていることは事実である。普通の人間は心臓を潰されたら間違いなく死ぬ。だとしたら俺はコイツと同じ化け物なのか.......?クソッ!奴の言葉に耳を貸さない方がいい。余計なことまで考えてしまう。

「普通.....?あきらかに異常な君が、普通の定義を決めるのはどうかと思うなあ。.....もういいや。気分が変わった。君を殺そう。うん!そうしよお。」

サイコ野郎の目が血走り始める。上がっていた口角をさらにつり上げながら迫ってくる。

おいおい!マジかよ。逃げなきゃ。

猛ダッシュで自分の部屋を出て、ころがるように階段をおり、走って走って走りまくった。助けを求めようとしたが、誰もいない。

この時間は人が結構いるはずなのに。なんで誰もいないんだよ....。


気がつくと学校まで走っていた。ここまで来れば追ってこれないはずだ。.......学校が静かすぎる。まさか、人がいないのか....?なんで?

「なんでだろお。ねえ。」

背後から奴の声がする。

驚きのあまり、俺は動くことができなかった。

ガンッ!

頭をなぐられたのか?意識が.....持たない。

「心臓潰してもだめだったからあ、頭つぶすねえ。おやすみい。」
















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