第19話お誘い

理蟹先輩が料理を作っている...。いやな予感しかしない。

「よし!出来たな!しずえ。味見してくれないか?」

「いいよ。フムフム....。なかなか良い感じじゃないかな。私の作ったポテトサラダはどうかな?」

「なかなかおいしいじゃないか。やるな。」

先輩が作ってくれた朝ご飯の味を思い出して、不安になる。本当にあのシチューおいしいのか?見た目や匂いこそおいしそうではあるが、味は本当に大丈夫なのか?

「俺がなんとかするしかないか....。」


「理蟹先輩、榊原さん!料理しているんですか?俺も混ぜてくれませんかね。」

「だめだ。私の料理がまずくなる。それにもう全部完成したしな。良い匂いだろ?そうだ!味見してみるか?」

「.....いいんですか?」

「いいぞ。ほら食ってみろ。」

このシチュー見た目と匂いは本当においしそうなんだがな....。

「どうした?食べないのか?」

「い、いや熱そうなので今冷やしてるところです。」

覚悟を決めろ!

パクッ。

「うぐっ。」

なんだこの口いっぱいに広がる塩の味は!もうしょっぱすぎて、塩そのものを食べてるかんじがする。それと、後からガツンとくるスパイスはなんなんだ?とうがらしか?ものすごく辛い。

「どうだ。おいしいか?」

「す、すごく、おいしいです。」

「ほんとか!まあ私の作ったものがまずいはずはないしな....。あれ?なんか顔色悪くなってないか?」

「だい...じょうぶです。」

「疲れてるのか?無理するなよ。」


これは...。食べるのきついな。

先輩と榊原さんの目を盗んでから、調味料とか水とかを加えて食べられる程度ぐらいにはしなければ....。

二人の方を見ると、なにやら話が盛り上がっているようだ。俺の方など一切見ていない。今がチャンス!!全力で砂糖、酒、みりんなどのありとあらゆる調味料で、味を整えていく(もはや整えるというよりかは、作り直すと言った方が正しいのかもしれない)。これでどうだ!味を確かめると、おいしい!とまでは行かないが、なんとか食べられるぐらいまでには行き着くことができたみたいである。


「レン。放送でご飯ができたことを、みんなに知らせてくれないかな。料理は私が運ぶからさ。」

「ああ。分かった。」

先輩が厨房を出て行ってしまったので、榊原さんと二人っきりになってしまった。

気まずい。

「すまないね。あの子のシチューおいしくなかったでしょ。」

「い、いや。そんなことは...ないですよ。」

思わずうなずくところだった。危ねぇ!

「あはははっ。顔に出てるよ。あの子が作る料理は昔からおいしくないんだ。見た目と匂いは良いんだけどなぜか味が悪くなるんだよね。」

「昔から....ですか。結構長い間一緒に住んでいるんですね。」

「長い間っていうか、レンが生まれたときからずっとだね。」

レンが生まれたときからずっと....?先輩との関係性がイマイチ分からないな。気にはなるが、問いただすのは良くないだろう。

「あれ?シチューの味がマシになってる。」

「余計なお世話だったら、すいません。俺が少し手を加えました。」

「すごいな。初見であの味を食べられる域にまで持っていくなんて。いやあ、助かったよ。あと少し、手を加えれば、おいしくなるはずだ。君はそのボウルの中にあるポテトサラダを皿に盛り付けといてくれないかな。」

「分かりました!」

「あと、ご飯食べ終わったあとでいいから、私の寝室まで来てくれないかな?少し話がある。」

「分かりまし.....えっ?なんでですか?今話せないんですか?」

「申し訳ないが、ここでは話せない内容なんだ。」

「そ、そうですか....。分かりました。」

寝室で、年上の女性と人前で話せないような話をする....。いや!別に期待なんてしてないぞ!高鳴る鼓動を無理矢理押さえつけながら、ポテトサラダの盛り付けをする。















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