第13話笑顔の裏側

「くそっ、いてぇ。頭が...割れそうだ。」

富田が苦しそうに顔をしかめる。

「完全に無効化することは...できないからな。それでもかなり...緩和しているはずなのだが...。」

理蟹先輩も苦しそうだ。

「もうだめみたいです。僕の分まで生きてください...。」

間遠先輩に至っては、気を失いかけている。

「おい!間遠。しっかりしろ!あと少しの辛抱だ。誰かコイツを支えろ。」

「俺が支えます。なんともないので。」

俺はなぜか苦しくなかった。いつもどうり。平常運転だ。

「お前...苦しくないのか?」

「なぜか分かりませんが、影響を受けてないみたいです。」


4分ぐらいで乱れが収まった。

腕時計で時刻を確かめようとしたが、使い物にならなくなっている。

まあ安物だしいいか。

「おれのiPhone15があああああ。」

富田。どんまい。

かく言う俺のスマホもぶっ壊れていた。

クソッたれがあああ。

「フム。電子機器はこの大きなコンピュータを除いて、全て壊れてしまってるな。ユガミル試作機も針がぐるぐるまわって使い物にならん。」

理蟹先輩はそう言うとコンピュータの前に行き、作業を始めた。

ちなみに間遠先輩は気絶したままだ。


しばらく休憩していると

「こ、ここはどこですか?」

間遠先輩の目が覚めた。

「なに寝ぼけてやがる。お前は無様に白目むいて気絶してたんだよ。」

気絶してた人に向かって容赦ねぇな。


「今からこのコンピュータのデータを破壊しようと思う。コイツが危険だということは、お前らも身にしみて分かっただろう。変態の違和感だったり、私の父親に関する記憶の喪失にも関係しているかもしれないしな。それにあの手帳に書いてあることが、本当だとするなら私は自分の父親の責任をとって、霊体たちを解放させないといけないと思う。」

たしかに危険だし壊すことには賛成なのだが...なぜ俺のあだ名が変態になっているんだ?

「それが良いと思います。少し惜しいですが、命には変えられません。」

「おれのiPhone15の仇をとってください!」


データの削除が終わった後、地下室を出て学校に向かい、いったん部室へと戻る。置き時計を見るともう17時になっていた。

「相棒。疲れたから帰る。じゃあな。」

「みなさん。明日も頑張りましょう!」

二人とも帰ったので俺も帰る準備をする。

「理蟹先輩。お疲れ様でした。」

理蟹先輩は偽りの笑顔で

「ああ。じゃあな変態。」

と言った。完全に怒っている。

「先輩。すいませんでした!仕様がなかったとはいえ、悪いことだったと思っています。」

このままでは俺のあだ名が「変態」になってしまう。それだけは阻止せねば。

だが意外にも先輩は

「あははははっ。ジョークだよ。こっちも悪かったな。しつこく攻めたりして。」

笑って許してくれた。


帰る途中自販機で飲み物を買おうとしていると、財布がどこにもないことに気づく。

はあ...。部室に置いてきたのか...。取りに行くのは面倒だが仕方がない。

来た道をもどり本日2度目の登校をした後、愛する財布の元へと急いで向かう。


誰もいないと思っていた部室の中から人の気配がする。

ん?理蟹先輩まだ帰ってないのか?

ガラガラガラガラ

「理蟹先輩。まだ帰らないんで....。」

扉を開けて中に入ると、目を赤くさせて泣いている理蟹先輩の姿があった。








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