第5話理蟹の推論

「なんか、俺を指しているみたいなんですが...。」

言っとくが、俺は空間が歪むとかいう理蟹先輩の話は信じていない。

「ほう。見せてみろ。....これは...なるほど!面白い。」

顔を興奮の表情に変えながら、理蟹先輩は話しを続ける。

「確かに、ユガミル試作機はお前自体に反応している....。この装置は、磁場を周りに作りだし、その磁場が乱れることによって空間の歪みを認知するのだがこれを作る際に大きな問題点が一つあった。」

「それは何だと思うか?」

磁場という言葉は中学生のころに習ったが、結局それがなにか分からないままだった。

そんな理科オンチの俺に、いきなりこんな質問されても分かるはずがない。

「わかりません。」

「フン。世界は磁場で溢れかえっている、という問題だ。電化製品はもちろんだが、私たちが住んでいる地球自体も磁場を形成している。すなわち磁場の乱れなど、日常茶飯事でありそれを観測するだけでは空間の歪みを捉えることなど出来ないんだ。」

「だがな、例外もある。磁場の乱れが異常なほど強くなるときだ。二日前ぐらいにこの学校で、人体へ悪影響を及ぼす強さの磁場の乱れが発生した。知っての通り、この学校の周りにそんなものをおこす原因などない。まぁその磁場の乱れが空間の歪みのせい、という確証もなかったんだがな...。その時のデータを収集し、作ったのがこのユガミル試作機だ。二日前の乱れの特徴と同じような、乱れに反応するように作ってある。」

この説によれば、二日前の岡村の体調不良は磁場の乱れが原因ってことか。

ん?待てよ。その乱れと同じような乱れが、俺から発生してるってことなのか?

「俺からどうしてその乱れが...?」

「ふむ。私にもまだ分からん。同じ特徴の乱れがあるといっても二日前のと比べたら、とても小さいものだ。磁場の乱れにあてられた可能性が高いだろう。昨日の体調不良もこれが原因ではないのか?」

「いえ、ちがいます。」

俺はここ最近、自分が感じてきた違和感を理蟹先輩に話した。

「興味深い...。」

とだけ言い、少しだけ考え込んだ後に、

「明日12時にここに集合だ。遅れんなよ。」

と俺に言い、また考え込んでしまった。

部室をでて、時計をみると12時を回っていた。

はぁ...。今まで俺は普通であることに自信があった。だが今の俺は明らかに普通ではない。というか、普通ってなんなんだろうな?まぁそんなこと考えても仕方がないし、腹ごしらえでもしようと思い食堂へ向かったが今日学校が休みだったので、開いていなかった。コンビニですませよ....。










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