第2話昨日との差異
4月21日(金)の午前
ジリリリリリリィーー
6.1畳の小さな部屋で、目覚まし時計が大きな音を反響させている。
まだ意識がはっきりしない頭で、時間を確認する。
~8時45分~
まずい。
俺の学校は始業時間が遅いほうで、9時ぐらいにホームルームが始まる。
だが、俺のアパートから学校まで歩いて10分。残されたタイムリミットは15分。朝食を流し込む余裕すらもあるかどうか、怪しいところだ。目覚ましは確か、昨晩8時ぐらいにセットしたはずなのだが...。遅い朝の知らせを伝えた目覚まし時計を恨みながら準備を行い、ドアを勢いよく開け、通学路を全速力で駆け上がる。うおおおおおおおおおお。
だが俺の全力疾走は、通学路を6割方過ぎ去ったところで限界が来た。これでも小学生のころは、サッカーを3年間ぐらいやっており走りには自信があったのだが。自分の体力のなさを痛感しながら、息を整えるために立ち止まる。
さぁ、また走りだそうと決心したとき、何者かからか背中を叩かれた。
「よお。朝からランニングか?」
振り返ると見知らぬ男が立っていた。背は俺よりも高く、髪は丸刈りで痩せ型、グラサンをかけているのも相まって、路上で聞いた関わってはいけない人間ランキングtop3位ぐらいには、入るような風貌をしている。
俺は、ビビりながら
「人違いじゃないですか?」
と言うと、グラサン半グレ野郎は
「おいおい。昔ながらの仲じゃねぇか。冗談でもそんなこと言われると傷つくぜ。」
などと訳わからないことを言い始めた。
いや、誰だよ!俺は生きてきて、16年間こんなやばそうなやつとつるむどころか、話したことすらねぇよ。だが、彼の服装を注意して見ると着崩していて気づかなかったが、俺と同じ高校の制服であった。
「てか、しゃべってる時間なんて俺らにないぜ。このままじゃ学校おくれっちまう!」
と言いながら、グラサン半グレ野郎は猛ダッシュで走って行く。
俺は最初の目的を思い出し、奴の後を猛ダッシュで追う。
うおおおおおおおおお
走った甲斐もあり、8時56分に自分の教室に入ることができた。
自分の席に着き、呼吸を整えながらグラサン半グレ野郎について考えていると、前からもの凄く聞き覚えがある声が聞こえた。
「よう。相棒。遅かったな!」
このときの俺の状態は、息が止まるほど驚くという言葉よりも、驚きすぎて息の根が止まってしまうと言う言葉の方があてはまるだろう。
さっきのグラサン半グレ野郎が俺の前の席(富田の席)に座っていたのだ。
「お前なんで富田の席に?」
俺は顔面蒼白させながら聞いた。
するとグラサン半グレ野郎は、当然のように
「朝からおかしいなお前。おれっちが富田だからに決まってんだろ。」
何の冗談だ?
俺がおかしいのか?
でも、言われてみれば富田の名残があるような....
いや。名残ってなんだよ。たった一日で識別不可能なレベルまで変われるのか?
「富田...。お前随分とイメチェンしてきたな。(まぁイメチェンで済ませられる変貌の仕方じゃないが)」
「おっ!相棒気づいたか!前髪を少し整えてきたんだよなぁ。」
富田よ。その程度の変化じゃないし、第一丸刈りで前髪は少ししかねぇじゃねぇか。
そんな心の中の叫びもむなしく、富田はそのまま授業を受けやがった。
このとき俺は富田のダイナミック変化に気をとられ、周りの少しの変化に気がつかなかった。少しではあるが着実に変化している。後から思い返すともっと周りにも目を向けるべきだったと思う。
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