第6話【2回攻撃】
「他の方、いらっしゃいませんか? よろしいですか!? それではこれで締め切らさせていただきます! 落札価格1024万!! ありがとうございました!!」
危ない、危ない。間に合った。
俺は会場に着いて慌てて目の間のリストを確認してからほっと一息つく。
狩りに時間を忘れて、気が付くと狙いのアイテムのオークション、入札時刻が差し迫っていた。
急いで街に帰り手に入れたドロップアイテムを全て売り払い、俺は所持金を1400万まで上げた。
それにしても俺が狙っているのは、使いようによってはかなり有用になる装飾品だと思う。
今持っている所持金でも果たして買えるかどうか……。
「それでは次の商品に移ります。次はこのアイテム! 『隼のグローブ』でございます!!」
NPC、つまりゲームの中のAIキャラが、本物の人間のように滑らかな動きで司会を進める。
面白いのはここで商品の効果から、このアイテムの見所を紹介してくれるところだ。
「この装飾品。な、なんと!? 2回攻撃が可能になる優れものです!!」
司会は大袈裟な身振り手振りで商品の説明を続ける。
テレビで一度オークションの映像がある映画を見た事があるが、もっと粛々としていた気がする。
そこら辺はゲームをするプレイヤー向けなのか。
それともオークションによって雰囲気も違うのか。
「しかし、お気をつけ下さい。いくら2回攻撃ができても、攻撃力は半減してしまいます!!」
司会は右の手を平を額に当て、わざとらしく首を左右に大きく振った。
「ところが、ところがですよ? 逆にいえば攻撃力が関係ないスキルなどはデメリットを受けることなく、2回攻撃ができちゃうんです!」
やっぱり!!
俺は思わずガッツポーズを取ってしまった。
思った通りの性能らしく、是が非でも欲しくなった。
「さぁ! 盗賊になって『盗む』の回数を増やすも良し。補助魔法を一度に2度がけしても良し! 皆様の活発な入札をよろしくお願いします!!」
司会の掛け声を皮切りにその場にいた色々なプレイヤーが入札の声を上げる。
オークション会場自体は誰でも入れるため、俺と同じような初心者の姿もチラホラある。
しかし当然のごとく入札を叫んでるのはみんな強そうな格好をしている奴らだけだ。
おそらくこいつらはベータ版からの継続プレイヤー。しかもかなりのガチ勢だろう。
そんな中、俺は周りにバレないように入札を繰り返していた。
やっているのは腕を前に組み、右手の人差し指を伸ばしているだけ。
「510万! 520万! 550万!!……」
価格はまだまだ上がりそうだ。
それでも俺は所持金ギリギリまで指を下げないつもりだ。
ちなみに、この仕草はオークションに参加を決めた時に画面が現れ説明があった。
声を上げてもいいし、上昇分を先に指定して、仕草を決めると、司会がその仕草を確認して自動的に入札を受け付けてくれるらしい。
もし無事に落札できても、俺が買ったということはなるべく知られたくない。
この前のあいつらは同レベルだから何とかなったが、ここで競り合ってるのは間違いなく所持金だけじゃなく強さもトップのやつらだ。
もし俺が落札したのがバレてドロップ狙いのPKを挑まれたら敵うわけがない。
なるべく大人しくしていないとな。
「1005万! 1020万! 1030万! ……1030万! 他にいらっしゃいませんか? それではこれで落札です! 落札価格は1030万!! ありがとうございました!!」
俺はいそいそと会場を後にした。
向かったのはオークション会場の出口。
キョロキョロと周りを見渡し、誰も近くにいないことを確認した後、アイテム画面を出して、新しく表示されているアイテムを選ぶ。
装備すると黒い皮でできた指なしグローブが俺の手にはめられた。
甲には鳥のような意匠が浮き彫りされている。
俺はその手で数回握ったり開いたりを繰り返す。
「よーし。ひとまず。あいつで試してみるか」
俺はロックビートルの出る狩場に足を運ぶ。
相変わらず人気がないようで、周りには狩ってるプレイヤーはいない。
「まずは試しに通常攻撃で攻撃してみるか。えい!」
俺はそろばんを握りしめ、ロックビートルを殴った。
すると当たる瞬間そろばんが二重に見え、ダメージ0が2回表示された。
「よしよし。これはきちんと効果通りだな。問題はこの次だ。ちゃんと司会が紹介してたから大丈夫だと思うが……」
俺はロックビートルに向かって「銭投げ」を使う。
使用する金額は30ジル。ダメージアップの効果を含めても一撃で倒すことはできない。
スキルを使った瞬間、10と書かれたコインが枚現れ飛んでいく。
いや。よく見ると、重なって見えるくらい近くにコインが並んでいる。
合計6枚のコインがロックビートルに当たる。
スキルの効果が乗り、ダメージ4が2回表示されロックビートルはポリゴン化し消える。
「おおー! やっぱり思った通りだ!! これはいい買い物をしたぞ。これで実質消費する金が半分じゃん!」
喜び勇んで周りにいるロックビートルをなぎ払った後、俺はレベル上げも合わせてできる適正狩場へと進んだ。
モンスターのレベルも上がりHPもさらに増えたが、何しろこっちは以前の半分の消費で済む。
俺は飽きるまで狩りを続けた。
そしてさすがに朝からずっとやり続けたせいで眠たくなり、ログアウトして固くなった布団に寝転がる。
「よーし。なんだ。『商人』でも全然稼げるじゃん。要はやりようだな。しかし装備とステータスはどうするかな……まぁ、明日考えりゃいいか。明日も休みだし。また一日中できるしな。おやすみなさーい」
俺は部屋の電気を消して心地よい眠りについた。
☆
【無限】インフィニティ・オンライン速報 Prat.122
930 名前:名無しさんファイト
くっそおおおおお!
犬っころ商人にボス武器盗まれた!!
あいつ絶対チートだろ!!
931 名前:名無しさんファイト
>>930
もふもふ?
932 名前:名無しさんファイト
>>930
嘘乙w
盗むは商人じゃなく盗賊のスキルだろww
933 名前:名無しさんファイト
>>932
嘘じゃねぇって
俺レベル13の大剣使い戦士職なんだが
同じ狩場で見かけた初心者装備の犬っころ商人に一撃で殺られた
ぜってぇチートだろ?
934 名前:名無しさんファイト
>>933
返り討ち乙wwww
商人に負ける戦士職wwww
935 名前:名無しさんファイト
>>933
雑魚乙wwww
936 名前:名無しさんファイト
そんな雑魚の愚痴よりさ
今日、素材の相場が一瞬だけおかしくなかった?
937 名前:名無しさんファイト
>>936
それは既出
盛り上がりすぎてスレがかなり流れた
938 名前:名無しさんファイト
>>936
なになに?
何があったの?
939 名前:名無しさんファイト
>>938
いきなり不人気素材の相場が跳ね上がった
すぐに下がったけどな
俺は転売でめっちゃ儲けた
ごっつぁんですwwww
940 名前:名無しさんファイト
>>939
いいなぁ
俺>>930だけど、武器買い直すための資金調達しようとして爆死
俺が買い占めた途端、誰も買わんくなった(´;ω;`)
941 名前:名無しさんファイト
>>940
雑魚乙wwww
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