一九 稲本団地 参

「私の判断ミスです……」


〈たしかに、社長を優先して守って欲しかったわ〉


「はい……」


「でも、あたしの気持ちを忖度してくれたんでしょ。その点は感謝する、たとえ結果を出せなくてもね」


「申し訳ありません……」


 改めて謝罪する。


「それで弓削雅俊はどうなったの?」


 話題を変えるように遙香は言った。


「はい、致命傷を与えるまでは……」


 くやしさが再び胸にこみ上げる。


「かまわない、むしろ朋美を逆上させる可能性が低くていいわ。

 あんたにはまた働いてもらうから、今はゆっくり休んで体力を回復させて」


「かしこまりました」


 満留はスマートフォンを置き項垂うなだれた。 次こそは遙香の役に立たなくては。

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