一九 稲本団地 壱

「遙香様、申し訳ありません……」


 あしみちは震える声でスマホに向かって言った。


「そう……まぁ、今回に限っては仕方ないわ、相手が相手だから」


 意外にも主の声は優しかった。遙香がどれだけ英明を愛しているかは知っている、にも関わらず何としても連行を阻止しろと彼女は命じていない。それは暗に、無理をしなくてもいいと言っていることを満留は理解していた。


 それでも彼女は、英明はもちろん好恵も護るつもりだった。遙香の指示には警察が二人を連行しに来るので、それを足止めしろという意図があったはずだ。満留は式神を操るのを得意とする。実はこのような事態を想定し、NEXT ADVENTUREとブレーブには式神を仕込んであった。警察を足止めするぐらい朝飯前だ、背後に求道会が居なければ。

 

「何があったかを詳しく話して」


「かしこまりました」


満留は何があったかを話し始めた。


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