四 FIAT 500X 参

「どう考えたってヘンでしょ。一部に人気があるにせよ、御堂永遠はデビューして一年しか活動していないのよ。しかも、それほどメジャーな作品にも出ていない」


 マネージャーでもある母からそう言われると少しヘコむ。


「それで仏眼が関わっていると判断したのか」


 遙香は肩をすくめるような仕草をした。


 聞き慣れない名前に朱理は戸惑う。


「え? どういうこと? ブツゲンってだれ?」


 遙香はチラリと隣でウトウトする刹那に眼を向けた。


「気にしないで話して、秘密は守るから」


 刹那は眼を開いて遙香を見つめた。


「別に秘密ってわけじゃないわ。親戚との込み入った事情を知られたくなかっただけ」


 渋い顔をする。


「それって秘密じゃないの?」


「秘密にしておけたらいいんだけどね」


 溜息交じりに遙香が言った。


「どういうこと?」


 何だか不安になってくる。


「例によって例の如くよ」


 遙香は法眼の弟、佐伯仏眼について話し始めた。朱理は、先ず祖父が婿養子だったことに驚いた。また、厄介事が起こりそうな予感がする。


 

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