たたかう勇気を

「書く」という行為は、戦い・闘いのどちらでもあるように思っています。今回は、少し書き手に寄ったお話です。


 作家さんによっては、『書くのが楽しくて楽しくてしかたがない』という、ポジティブなかたもいらっしゃるでしょう。陽の属性ですね。わたしも、どのような内容であれ(それこそ始末書でも)、文章を書くのは自分を解き放つことなので、楽しむ気持ちを持っています。ですが、それよりもはるかに大きなネガティブな思考、陰の属性と向き合う時間のほうが多くなります。努力を怠った報いでしかありませんが、自分はなんて書く力が乏しいのだろう、と。それは、耐えがたい恐怖となって、存在感を増します。決して目の前には立ちません。背にはりつき、画面に表示されてゆく言葉のひとつひとつを追い、ときおり手にふれようと腕を伸ばしてくる、実体のない影です。日々、心のままにエッセイを書き続けてきましたが、本エピソードで初めてそれに襲われました。おそらく、エッセイの終わりを予感し、本来描きたい物語に戻ろうとしたから、現れたのだと思います。その物語は、今のわたしでは描き切れない、と、そう感じているものなのです。


 書く力・技術がない。書き手としては絶望的な響きで、屈してしまえば楽になれます。すてきな作品はたくさんあり、読み手になれば、思い悩むこともなくなります。ですが、書き手とは難儀を好むとでもいいましょうか、それでも書かずにはいられないんですね。心に浮かんだ情景を「書きたい」と思いさえすれば、力なんてなくてもよい、と。

 そんなとき、書き手を支え、奮い立たせてくれるのは、やっぱり読んでくださったかたからの応援です。考えようによっては、応援とは倒れることを許してくれない厳しさにもなりますが、不思議と笑顔で受け入れられる気持ちのよいものです。このエピソードは、そんな応援にふれて書き上げました。

 応援からたたかう勇気を得て、這うような速度でも前へ進む書き手が、ひとりくらいいてもよいのかもしれませんね。


 縁の生まれたすべてのかたに、感謝を──。


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 ◉Point

 応援が作家さんを勇気づける。

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 つづく

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