応援ではない応援
今回は、いつかこの日がくるかもしれない、と予感はあっても、進んで書こうとは考えていなかった、そんなお話です。本エッセイへの応援にふれ言葉が浮かんできましたので、書かずにはいられませんでした。暗い内容であっても、それを伝えてくださった読者さんへのお礼でもあります。
初めて応援をしたとき、カクヨムの理念にふれて、とても共感しました。作家さんだけでなく、読者さんもカクヨムを楽しみましょう、の気持ちが伝わったからです。しばらくして応援に慣れてきたころ、いよいよレビューを、と思ったとき、まずはどうすればよいのかを知ろうと、他のかたのレビューをひたすらに読んでみました。そこで目にしたのです。今回のエピソード名にした“応援ではない応援”を。
Amazonのカスタマーレビュー、App Store / Google Play ストアの評価とレビューなどで見かけたことはありましたが、カクヨム上にも存在する、誰かを傷つける言葉。本来、応援するための仕組みであるはずの★が、相手を
暗い感情は、おおむね「怒り」なのでしょうけれど、怒りの正体を突き止められる人は、あまりいないように感じています。「つまらない」「期待を裏切られた」は表層にすぎず、それにより行動するのは、怒りに振り回される、もしくは、操られているといってもよいでしょう。怒りとは“自分だけの感情”です。送り手は当然、その感情を知りません。ですので、個人が求めるものが生み出されなくても、なんら問題はないのです。しかし、怒りにまかせるかたの思考は、「自分が求めるものをなぜ生み出さない」で占められています。そのかたが送り手に思いを伝え、応えようとした送り手の力不足で求めを満たせなかったとするなら、その怒りはとおります。送り手も受け入れてくれるでしょう。
ですが、受け手・送り手が同じ思いを持っていない場合、怒りは「個人の感情の押し付け」でしかありません。思いを叶えて欲しい、けれど意思の共有を怠っているようでは、ひどい一方通行ですね。自分がそれをされたら、きっと平気ではないはずです。
これは、カクヨム利用だけでなく、交友・恋愛・子育てと、身近なところにもあてはまります。「怒りをぶつける」とは言ったものですが、受け止める用意のない相手に個人の感情を投げつければ、そこにはケガしか生まれません。交通事故・天災に遭うようなものです。被害に遭われたかたの気持ちは、想像に難くないでしょう。
では、その感情とどう向きあえばよいのでしょうか。答えはシンプルで、怒りによってもたらされた心象を、相手のためを思って伝える、それだけです。このときの感情は、怒りではなく「叱る」です。叱るの根底には、相手への思いがありますので、必然、ものの言いかた・伝えかたが変わります。思いの共有・歩み寄りは、相手に変わってもらうために必要なものの半分を、自分が受け持つのと同じです。自分も何かをするのだ、となれば、それはもう一方通行ではなく協力関係にありますね。うまくやっていこうとする中での衝突は、相手への思いと、自分が果たすべき責任のどちらもバランスよく内包しますので、たとえ一時の感情に振り回されても心配はありません。修復する力が、自然とわいてきますので。
今回のエピソードがまさにそうですが、肯定も否定も、心が動いたのなら、どちらを選んでも正解です。わたしは少しひねくれているところがありまして、自身の物語を「つまらない」と否定されると、とても安心します。あらゆるものには必ず反対の面があり、「つまらない」の感情がはっきりと存在するなら、逆の思いも確かにある、と信じられるからです。「つまらなくないけれど、面白くもない」がもっとも不安になります。肯定も否定も、どちらもいないかもしれませんので、送り手としてこんなにさびしいことはありません。
少し脱線しますが、わたしは物語を磨き上げる工程で、必ずしていることがあります。それは「嫌な読者になって読む」です。最初から肯定して読んでしまうと、いろいろなものを見落としてしまうんですね。誤字脱字に代表される文章の不備、タイプミス、用法の誤り、伏線のはり忘れ(拾い忘れ)、設定の不整合などなど。「あなたの物語、まったくなってませんね」と、別の人になりきります。いくつか公開したわたしの作品をそういった視点で否定するなら、以下のものが挙がります。
「善良な人ばっかりでつまらない」
「人が死なない話じゃ、感情が動かない」
「狂人の類は書けないの?」
「同じ世界設定を使い回しすぎ。飽き飽き」
「情景描写が少ない。実力不足をごまかしている」
自分でしておいてなんですが、ぐさっときますね。もちろん曲げられないものもありますが、否定意見はとても参考になります。不快ではありません。
応援は自由です。乱暴な話、カクヨムの理念を忘れてしまってもよいと思っています。ですが、もし何かしらの事象にふれ、あなたに怒りの感情がわいたなら、それを投げかける相手の存在をはっきりと知りましょう。そのかたが、あなたの思いに応えてくれるのかどうか、時間と気持ちを込めて、様子を見るのです。相手をきちんと知るころには、怒りは別の感情に変わっているはずです。その感情は、きっとあなたの心を温かくしてくれるでしょう。
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◉Point
応援でない応援は、あなたに何ももたらさない。
相手への思いを忘れずに。
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つづく
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