第2話
今まで彼は家の周りをただぐるぐる走ることしかしておらず、ボールを使った遊びに興味を持つのは不思議なことではない。彼の親は仕事が忙しくて春休みだからといってどこかに連れていってあげられるような状況ではないようである。あんまり私達のように家の周りでボールを使って遊んでいるような人はいないのでボールを使って遊びたいから家に来たという理由は筋が通る。
彼を私が元いた場所に連れていったことによって妹の顔色は若干濁ったように感じた。よその人と、しかも年がこんなにも遠い子と遊ぶことに対して積極的な感情は抱けないというのが本音なのだろう。
他にも沢山の少年・少女達がいるのにも関わらず一人で人の家に来る彼の行動力や細かい仕草が私の母性を刺激してよその人の子なのに愛しく思えて仕方がない。
妹は外面は成長しているけれども内面の成長はまだ途中のため私ほど母性が芽生えておらず、彼に対して素っ気なくなってしまうのである。
妹と彼の遊んでいるのを保護者のような位置から見ていたのだが、あるふとしたときに彼の口から
「ナナミちゃんってどっち?」
と妹の名前が出てきた。私の中では小学校で何らかの関わりがあって彼が名前を知っていたと考えた。
妹に近寄って彼と学校での関わりが何かしらあったのかと聞いてみたところ、近所の子、ということくらいしか知らなくて関わりは一切ないということだった。
また自分の名前を明かしたいとは思わない、ということらしく私と妹のどちらが七海なのかについては曖昧にして分からないようにした。
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