第31話

浮いた腰を戻して、チーズケーキで口直しをしてまた攻撃を続けてきた。


「私は初めてを大事にしてるだけですから~。既成事実に使う方が狂ってでしょ、どう考えても。というか考えても実行するのが一番怖い。彼氏寝取られても、人殺しはダメだからね?」


「結果論で言えば成功してたからいいじゃない。それに、人殺しなんてしないよ?社会的にじわじわと地獄に落として死ぬまで苦しますんだから」


「既成事実は成功してるけど、人選びは失敗してない?浮気なんかするような奴はさ」


「わざとって言ってるでしょ」


これでも傷ついてるの!ほかの女に気を取られてるのにイライラしないわけないでしょ!怜のためにと思って我慢してるのに意識的か無意識的にか塩を塗りこんでくるとは。


「けど、あれが最初で最後だったよね~。澪が私に泣きついてきたのは」


一瞬で蘇る黒歴史に手汗がにじんだ。


「部活の先輩とか呼んでさ、怜君にお酒飲まして。はっはっ、ちょっと待って思い出しただけで笑えてきた」


震える手で飲もうとした紅茶を皿に戻す。ふぅーふぅーと紅茶ではく、自分の感情を冷ますために息を吐く。


「なのに、ビビッて介抱だけで終わってんの!それで、深夜にダメだった・・・って連絡だけは送ってくるのねっ、ひゃひゃひゃひゃっ!」


机に額をつけて手をバンバンと叩いて大声で笑ってくる。ちらっとこっちをみるとまた一笑い。この甲高い笑い声が脳にキンキン響いてくる。


その顔面を机にめり込ませてやりたいが事実に間違いない。怜関連に関しては腫れ物が眠っているがまだ眠っている。眠れる獅子は私を膝から崩させそうだから黙っておこう。


ショートケーキを一口を、二口と連続で詰め込む。


「今でも持ってる?怜君を誘惑したネグジェリ」


「もちろん記念品だから持ってるよ」


「私のセンスが光ったよね~」


誘惑したのもお酒の力を助けにもらった。


大学二年生で誕生日も迎えていなかったから法を犯している。怜に何回か飲ましていたから気が緩んでいたんだと思う。


本当に今思えば、狂ってる。


何を焦っていたのか。関係を確実に続けていくのなら、セックスも付き合ってからの方がよかったはずだ。


彼氏・彼女の関係を階段を着実に踏んでいけばどこかで怜の火もついたかもしれないのに。


やっぱり冷静に見えて、狂っていたんだ。


狂人で、病人。もう私はダメかもしれない。


今もきっと狂ってる。怜を愛した時からずっと。


狂ってずれた歯車はどこかで噛み合った。もう前の私のロジックではなくなった。狂ったことも分からないままクルクルするだけ。



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