第28話
スッキリとした感情とは裏腹に黒く落ちていく塊。鉛を付けられたような足を引きずって自分の家に入っていく。
怜の家に私が入っていく写真を元カレはどこから手に入れたのか?怜の顔は見えなかったが私の顔だけははっきりと見えた。意図されたものだとしか思えない。
そうなったら犯人は一人だ。
澪。
見逃されていただけ。いつでも潰せる証拠を握られながら私は浮かれて、澪のことを出し抜いたと思って勝ち誇っていた自分がいまはひどく浅ましく見える。
滑稽で、道化は私だった。
もう一度は諦めた。怜との関係はあぶく銭のようなもの。それも澪からもらったもだった。
ごめん、怜。ここでお別れ。
怜は元々口数が少なくて、顔が良いぶん顰蹙を買いやすいんだから。怜の良さが伝わる前にみんな離れていっちゃうし。燃料を投下したくはない。迷惑はかけたくない。弁明の機会もなさそうだし!
図書室で会うのも終わり。大して本なんて好きじゃなかったし、私の読書ブームが去っただけ。
部屋は暗いまま、車の照明が時折窓を照らすだけ。
澪は絶対に許してくれるだろうから、仲良くやってね。
もしかして、怜と澪の絆を深めるために利用された?そこまで考えられてたらもうお手上げだよ。優しく両手を広げて受け入れて上げるんだろうな。
怜と行った映画 のチケットだ。面白かったな~。映画を見た後心なしかずっと微笑んでいた。私のセンスは良かったみたい。
もう怜の横顔は見れないかな。目が悪くなっていきそう。怜の顔を間近で見ると心が温かくなっていったのに。もうそれも感じられない。
体の力が入らない。何のやる気も起きはしない。ついてもいないテレビを見つめるだけ。
なんて言えばいいの?
怜は鈍いから、しっかり言わないと。ぼかして言っても絶対に伝わらない。怜のことだから"そう"だけとかで終わんないよね、・・・終わりにしないよね。
好きだったんだけどな~。先に付き合ってたら私が一番になれてたかな。私を好きになってくれてたかな・・・。
タラレバを一つ、また一つと考えるたびに周の心は木綿で絞められていく。
布団に倒れこんで目を瞑っても逆効果でしかない。怜との記憶は悪夢にもなってしまう。あんな幸せいらなかった・・・。
涙は一滴、また一滴と落ちていく。誰が聞くわけでもない泣き声を周は唇を閉じて必死に抑え込んだ。
澪をもう裏切ったらダメだからね。私以外に浮気なんてしたら、澪を代わりに私があんたを殺してやらから。地獄の底まで追いかけらから。
澪をちゃんと好きでいてね。お願いだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます