第27話

※周視点


これは私の問題だった。晴天の下で笑って駆け回っても、どこかで空は曇っていく。雨にも風にも打たれても言い訳も何もできない、アリとキリギリスの中なら私はキリギリスだ。


怜と図書室で別れ帰路についていた私の足は自分の家の目の前で止まった。


「・・・なんでここに?」


「来ちゃいけないか?別に不法侵入ってわけでもない。彼女の家で待つくらい許してくれよ」


私の元カレは緩慢な動きで立ち上がる。うっとおしそうに服についたほこりを払うとこっちを威嚇するように見てきた。


私に家に門番のように立つ男は居心地悪そうに銀色の腕時計をつけた手で頭をかくと本題を切り出した。


「おまえ、これどういうこと?」


突き出されたスマホには写真が写っているようだ。はっきりと分からないが大体内容に察しはついた。


元カレのスマホにすり足で近づていく私の体。元カレが怖かったわけではない。


「浮気の証拠だよな!チッ、誰だよこいつ」


私が怜の家に入る時、怜が私を出迎えている瞬間だった。肺が潰れ呼吸ができなくなるような感覚が襲ってくる。


「おい!聞いてんのか!なんか言えよ!」


まだ、冬にはなっていないはずなのに妙に体が冷えていく。自然と体は小さく縮まっていく。


顔をゆがませて近づいてくる元カレには気がつかなかった。いつの間にか私は地面に尻もちをついていた。元カレに肩を張り倒さていた。小鹿のようになっていら貧弱な足腰で耐えきることはできなかった。


やっとこの時、元カレに意識が向いた。いや、ただの八つ当たりだった。


「私はあんたと付き合ってなんかない。もうとっくに別れたわよ!勝手に俺の女認定なんかしないでよ!」


「距離を置こうって言っただけだろ!別れるなんて俺は了承していない!」


「あんたなんか好きで付き合ったわけじゃない!ただの暇つぶし!相手にしてあげたこと自体奇跡だと思いなさいよ!」


「っ、ふざけんな!ビッチくせして上から言ってんじゃねぇ!こっちからお前みたい女願い下げだよ!」


ジャリジャリと踏み鳴らして元カレは帰っていった。


手に砂利が食い込み赤くなっている。


「痛った~」


いまさらになって尻と手が痛くなってきた。


"相手にしてあげた"か・・・。怜にとっては私はきっとそんな存在なんだろうな。もうこの関係は終わりみたい。


怜に迷惑はかけたくないし、この関係は元々諦めていたし、あぶく銭みたいなものだったから。泡沫みたいに消えて当然で、きっと正解なんだよ。


痴話喧嘩ってホントにしょうもない。けど必要なものなんだよ。



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