第25話

※周視点


この1ヶ月、私は満たされていた。これ以上ない幸せで。


図書室でいつも通りを向かい合って装う日常も、一緒に出る外に出る時と心臓は脈打つのは止まらない。


心臓は跳ね上がって、私はスキップをし始める。体は軽い、お天道様に照らされた私を乾いた風が冷ましてくれる。


振り返れば怜がいて、その手を握って太陽に向かっていける。


「明後日、映画見に行かない?」


澪にバレないように会う回数は制限している。基本的に平日は怜と澪が一緒に帰るけど、休日は別。


怜だって一人になることだってあるし、澪は澪で友達付き合いだってある。


近くの観光地とかには大体行けるし、夕方からヤるのも燃えるでしょ。


澪はすっからかんを相手にしてるのも笑えてくる。ふふ、あの時言われて言葉はまだ覚えているよ、しっかりとね。やっぱり謝っていいた方がいいかな。ビッチでごめんなさい。


「いいよ、なに見るの?」


「何見ようか?」


「決めてないの?」


「怜と見に行くのは全部楽しいからいいのっ」


和やかな会話。まるでカップルみたい。誰もいない図書室で浮気デートの相談をする、なんて背徳的。私の自尊心は高ぶっていく。


「確かに」


また、私の心臓のビートは一段階ギアが上がっていく。


そのセリフはずるいよ。


何食わぬ顔で言うことじゃないでしょ。なんでこっちがカウンターされなきゃならないの。防御力ゼロみたいで悔しくなってくる。


行きたいところも知りたい事もまだまだ残ってる。


怜の好きだって知りたいし、私の好きだって教えてあげたい。


怜のよく聞く音楽、私の好きなグループ、怜のお気に入りの作家、私の心臓の推しのアイドルとか。


正式な関係にならなくてもいいの。


魔王を打ち倒すのはまだ早い。


「怜は動物好き?」


「オシドリは嫌い」


「なんで?」


「オシドリ夫婦は仲良くないから」


頭に?が整列していたが、こういう時に便利なスマホ。


ふむふむ、えーと、オシドリ夫婦は仲睦まじい夫婦のことを指すが実際は・・・


メスが産卵を始めるとオスはどこか行ってしまうと、それに二人が一緒にいるのはオスが浮気しないか、メスが監視しているから、と。


オス、クズ男じゃん。言い方悪くしたら、孕ませたら用済みってことでしょ。


まぁ、普通にこれは嫌いになるわ。


「人のこと言えなくない?」


「ん?」


「いや、何でもないで~す」


これ以上聞くのはやめておこう。同族嫌悪ってやつかな。いきなり不安になってきちゃうだろうが、変な知識だけつけさせやがって。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る