第24話
悠斗の目的は怜だった。
怜の図書室での位置取りはドアの開けた先すぐそこ。悠斗は戦場にでも行くのかという心を作っていったが奇襲するかのような怜の位置。
面食らうが怜は悠斗を気にする道理はない。いつも通り冷めた無表情で本から目を離していない。後ずさった足を戻して前に出そうとした所で悠斗の混乱の種が芽を出した。
周の存在だ。
怜の真向かいに座る周。無駄にだだっ広い図書館で真向かいに見知らぬ人は座るはずがない。
二人とも無言で相手のことなど眼中にないような素振りをしていた。図書館だから静かにするのは当然のこと。他に人などいなくてもマナーとして守られるものだ。
悠斗の黒い瞳に周が映ったときに悠斗の頭はショートしていた。そして、図書室を出て逃げ帰った。
すぐそばの廊下でしゃがみ込み頭をかきむしる。難題のヒントを掴んだ感覚。同時に重大なことに迫っている緊迫感。自然と深く息を吸ってタバコの煙を見て楽しみように細く息を吐く。
おかしい、怜はネットはほとんど使わないはず。交友関係もないし、情報も
ネットじゃまったく出てこない、性格は陰キャもしくはコミ症なはず。
なのになんで周みたいなイン○タが華やかに彩られた陽キャと一緒にいる?どういう関係なんだ?
それも周は澪に探してほしいと頼まれた人。怜と繋がりがあるなら、怜に聞けば十分だったはず。
澪→怜ってことも考えらえるか?一か月がそこらの知り合いに彼氏のことを紹介していたらもっと大学内に澪に彼氏がいることは知れ渡っているはず。じゃあ、この線ははずれ?一か月で仲良くなるのも可能か?陽キャのコミ力を舐めないほうがいいか?
図書室のあの空気感は一か月そこらで作れるものではない気もする。
それにコミ症に作れる雰囲気じゃない。互いに信頼をしきっている、安心できるあの無言の状態は。無言って結構勇気いるからな。陽キャなら余計に気にする。
けど、それっておかしくないか?
・・・怜はクソヤロウか?
そう考えればすべてに辻褄はあう。
怜ではなく俺を通して周に接触した澪の理由。二人の親密の雰囲気。
悠斗は咄嗟に手で口を覆った。その下には醜くく上がる口角が隠されていた。怜の浮気という結論に確信を持って。
はっきり言って、悠斗の目は濁っている。
悠斗の知る範囲では澪が怜と周の関係を知らないという可能性もあるし、浮気まで発想が飛ばなくてもいいはずだ。澪が警戒はする怜の何もない仲の良い女友達という。
この結論は悠斗の無理筋だった。けれど、何という皮肉だろう、この結論はあったている。
悠斗の生み出した怜の裏の顔は見事に現実に則していた。
残念ながらその内情は大分違うことになるが。この差異はどこかで大きく悠斗に返ってくるだろう。
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