第23話
悠斗が怜の特定に要した時間は二週間。
できるだけ澪には知られないようにしたた時間がかかってしまった。
塩顔、クール顔のイケメンを具現化したかのような美貌。雰囲気も相まってまさに氷を思わせる。中々忘れられるものじゃない。悠斗にとっては忘れられないの意味は異なるが。
同じ大学、同じ学年。噂にも聞かなかったことが不思議なほどだ。澪に並び立つ学力、美貌があることは証明され、悠斗の正気を保つためのものはまた一つ減った。
次に知るべきは怜自身のこと。
ここまでくればと思っていた悠斗だがこれもまた手こずった。
まず、怜自身のアカウントがない。一切なかった。一般的な大学生ならアカウントを持っていて当然、ないものをあると思って探すほど虚しいものはない。
目はしょぼしょぼとして眼精疲労を訴えてくる。次第に目の下、クマのできているところが勝手にピクピクと動き、痙攣していく。さすがにやばいと思って悠斗もこの日ばかりはスマホ断ちをした。
何をしても成果は得られず、霞を掴もうとしている感覚にイライラは常に怜に向かって増長していく。
怜のアカウントを諦め、心機一転怜の知り合いを探す方向に悠斗はシフトした。
またこれも見事にうまくいかなかった。
怜は友達が少なかった。いないわけではない。学生生活を送るための最低限度を少し下回るぐらいだろうか。澪のおかげで何とかなっているのである。
それにもし、怜が社交にも長じていたら澪とグループ課題を組むこともなかっただろう。友達に少なさという要素は怜にはとってはすべてプラスに変化している。
悠斗は怜が写っている写真を探すために上に弾かれる親指。画素の高さも必要のない豪雨でも降っているかのような写真を死んだ目で見続けた。
そして、また諦めた。
もちろん、怜が主軸になって映っている写真がないからだ。
粘りに粘って怜と澪のデートを目撃してから一か月が経っていた。
悠斗は何かの義務感に縛られているかように怜に執着していた。怜が蛇のような粘着質な眼から逃れられたのは見つからなかったという幸運だけ。
悠斗はただの異常者か?一か月だ、一か月、怜のことを知ろうとスマホを手放すときはなかった。
まるで恋みたいだ。
悠斗は気づいてすらいない感情に突き動かされて残された道に進んでいく。
怜と周のいる図書室へ。
これも当然。
あの人の人格を、人となりを知りたいなら会って話せばいい。一番の近道でだから舗装もされている。その道を行くのに何を恐れているのか?
この邂逅がトリガーだった。このタイミング次第では大きくその後は変わっていただろう。正解は人によって違うかもしれない。
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