第21話
怜と私は違う。同じ病人であることは違いないけど違う。
生き方の本質が違う。
私は打算で。
怜は優しさで。
表面上では私のほうが優しいかもしれない。誰にでも平等に接する姿はまさに天使、その美貌もお金持ちのところも鼻にはかけない、とか言われてるし。
それも全部打算。私は機械。
やらない善よりやる偽善だとしても、たぶん裏側は悲しい。
空気だって読むし、雰囲気次第では簡単に人を見捨てる。
その優しさが見合わないと思えば、その思考は閉じられる。
怜は心底からの優しさなの。混じりっ気ない白い白い思い。優しくされた方も怜も嬉しい。そこはきっと理想の世界。
その優しさを享受する人が少なくてもワンダーランドなら十分でしょ。
私はその少ないも何もない。全員が同じ対象になってしまう。誰一人特別なんていなくて、ただただ平坦なだけ。そんなのあってもなくても同じでしょ。
私は生き方の本質はあってないようなものだったってこと。
怜は生きる本質を実行してる。
なんか自分で言っててよくわかんなくなっちゃった。ふふ。言いたいのは怜は心に優しさが残ってるの。そしてその送り先を探してるの。きっと愛に昇華していく、優しい優しい感情を。
私、怜がよく本を読む理由が分かるんだ。
本は感情を味合わせてくれる。現実がどれほど無味無臭だとしても本の世界はいつだって変わらない。感情がそこに記されている。偽物で胃を満たして、息をする。
リアルのがないからしょうがないでしょ。
私たちはキャンプファイヤーの見物人。自分じゃ付けれない。訪れた人たちの火の粉は小さすぎた。私たちに吹く風は何倍も強い。何にも変化のないキャンプファイヤーを眺めるみたいなもの。誰だって飽きるでしょ。
ただ生命活動を行うだけじゃ足りない。人間は生物としては不完全すぎる。人間じゃなかったらこんな不器用な生き方しなかったのに。ていうか、群れにトップぐらいに私は成れる自信ある、奇遇なものね。
隣にいるよ。
怜の隣にずっといるの。火を着けられるのを諦めて眠ったとしても。
火は狙って付けるものじゃない。だって私、怜に落ちるなんて微塵も思ってなかったし。私ってもしかしてちょろインなの!?とか思ったりしたし。
ただ隣で待つよ。
怜にキャンプファイヤーの周りでダンス踊るときにダンスの相手がいないと困るでしょ。ふふ、私はリードもしてあげる。
え、私はって?
大丈夫。
温かいどころか熱いぐらい。だって隣にキャンプファイヤーがあるんだよ!
それにね、私のキャンプファイヤーが燃え尽きることはないけど、怜のキャンプファイヤーは分かんないでしょ?
燃え尽きたあと、残るのは私と踊った思い出と焼け跡だけ。炎に照らされた私はきっと綺麗だよ?残り火を拾って私がまたキャンプファイヤー作れるかもしれない。ダメでも新しいのを一緒に探しに行こうよ。
怜、私は受け入れるよ。
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