第20話
私と怜のグループ課題は順調に終わっていった。図書室やカフェで一緒によく課題を進めていた。もう一般教養の科目ですら被っているものは少ない。最初で最後の怜とするグループ課題だった。
そうなれば、自然と怜の人となりも見えてくるもので・・・。
まず人たらし。
「その服かわいいね、新作?」
「髪型似合ってるよ」
思ったことを素直に口に出しているだけ、なんだけどこう、言ってほしいことを言ってくれる。
褒め言葉を連発してくることも珍しくないし、たぶん恥ずかしさとか後のことをそんなに考えてないんじゃないかな。無表情で言うから余計にタチが悪い。こっちが恥ずかしいじゃん。
次に気分で動くことも多い。
課題後回しで本を読んだり、ボーとしている時もある。虚空を見事に見つめている。
一応、義務感があるから課題を続けるんだろうけど効率はガクッと落ちる。ポケーとして進めている姿を見るとナマケモノみたいだ。今はそんな姿も好きだけどさ。
ただただ波長が合う。
同種の人間だからかもしれない。なぜだか気が抜けていく。ここまで自然体に慣れるのは麗以来で、自分に驚いた。
特別な事は何もない。けど心に深く残っていくの。白い結晶が底にゆっくりゆっくり沈殿していくみたいに。積み重なっていく。
白い結晶はどんどん大きく一つに融合していく。いつの間にか水がこぼれた。
そしたら、コップはいらなくなった。
一気に私の視界は開けて大海原が私の心に広がっていく。船に乗って色々な冒険をするんだ。子供心にワクワクしていたかもしれない。
私に必要なのは熱じゃなかった、燃え上がらせる炎でもない。すべてを包んで受け入れる海だったの。
大海原にすることは決まっている。白い結晶を一つ、一つ沈めていくの。いつかこの大海原が埋め尽くされるように白い結晶を集めるの。
いっぱいお話するの。夜更かししてゲームをするの。一緒に勉強するの。
で、寝る前にキスをするの。
美味しいごはん食べにいこう、温泉に入りに行こう、水族館とか遊園地に行こうよ。
夜に包み込むようなエッチをして。
惰性で生きてきた人生はここまでの努力をみたいなもの。世界を諦めなかったからこそ今がある。
何でもない日常が狂おしいほどに愛おしい。
一日一日で白い結晶は落ちていく。いっぱい甘くなるように。
ふふ、甘い地獄。
木漏れ日に照らされた手は怜の透き通るような白い肌を強調させる。机の上で手のひらを重ね合わせる。
あぁ、私の愛の形。
愛されたら私は壊れる。白い結晶で海を越えて空までが埋まってもうどこにもいけなくなる。止まってしまう。
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