第19話
※澪視点
土曜日、怜はお昼過ぎに帰ってきた。
その後怜を外に連れ出した。ご飯を食べて、服を見る。また新しく本を買ってカフェに寄って少しだけ本を読んだり、いっぱいお喋りをする。
私は愛してる、怜を。
浮気とかいつか不倫をされてもそれは変わらない。そして、別れても同じ。私にとって怜は唯一の存在。
一番最初に会った日もこんな感じだった。
木漏れ日に照らされながら本を開いている怜が図書館にいた。目は縦に動いていきまた戻る。何も変わってない。
「ねぇ!あの人めっちゃイケメンじゃない!前から思ってたんだよね」
今も変わらず仲のいい友達、
「そうだね」
大学一年の時は女の子に群がられている印象しかない。その点ではちょっと親近感を覚えたぐらい。けど、数日後には忘れていたと思う。関わりなんてなかったからこの時はどうでもよかった。
私を知るとみんな蜜に群がるようにやってくる。お金?顔?それとも私のステータス?
有象無象の自分の欲望しか映していない瞳は黒い太陽みたいだった。それは蠅のように周りを飛び交う。
消したいと思うのは当然でしょ。けど太陽だから。太陽だからないとこっちが困っちゃう。ふふ、理不尽でしょ。
大学生って案外厄介なの。
嫉妬を隠して近づいてくる。蛍光灯の明かりだけをもらおうと。ただ私にとって邪魔でしかないのに。そんなことは虫だから考える脳もないのかしら?それとも悪知恵が働いているのかもしれませんね。
だから、捌かなきゃいけません。誰だって孤立したくはないでしょ。どんなに嘘であっても悪口、陰口を吐かれたくない。
中、高とやってきたので慣れわしましたが疲れるものは疲れるというものです。
指で口角を押し上げて、笑顔を振りまく。
つまらない話も自慢話も笑って、つらつらとほめ言葉を読み上げる。
それでも八方美人ができない世の中だけど。
麗が大学を休んだ時にグループ課題があった。みんな私とペアを組みたがらない。自尊心は大切なだものね、しょうがない。
余りもので組み合わされたのが怜だった。
「よろしく」
その言葉と目は物語っていた。私と同種だ。
原動力。人の生きる原動力。君は何?私、私分かんない。
運動は楽しい。友達と喋ることは楽しい。本を読むことは楽しい。
けど、原動力にはなりえない。生きがいになんてなれないの。
ふふ、世間はこの状態を病んだとか言うでしょ。ずっとその状態に私たちはもう完全な病人ね、ふふ、怜も私も病人。
生きる理由もない、死ぬ理由もない。惰性で生きる。
けれど、天は私たちに二物、三物も渡してくる。
嫌われたくない、当然のこと。笑顔を振りまくのは疲れるの。分かってる?
八方美人になれないって言ったでしょ。悪口、陰口を処理するのも立ち向かうのも疲れるの。
病人を働かせるなんてやっぱ世界は残酷ね。
自分の人生なんて今終わってもいいの。自分の人生に意味なんてない、価値もない。売れないことが本当に残念!
大分遠回しになったけど言いたいことは簡潔にまとめると一つ。
熱が欲しい。
一生追いかけられる熱を、すべてを忘れられる熱を、身を焦がしていく熱を!
私のエンジンに火はまだ付かない。
もう少しで付くことを私は知らない。
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