第18話
それはそれは美しいお嬢さんはみんなから花をもらう。
快活に日光がにじみ出るように笑って。
お嬢さんは花を花冠をへと変え、いつか王子様に捧げる。
二人ともお似合いの花冠をつけて花畑を歩んでいく。
みんなその背中を不揃いな拍手で見送っていく。
これは表。
集めた花は無残にも捨てられ、踏みつぶされる。
お嬢さんはその花を何とも思っていないから。美しいともかわいいとも思わない。ただの物質、花は花であるだけ。
綺麗だと思った花を集めてお嬢さんは花冠を作る。自分を着飾るために。
これが裏。
まるで悪魔だ。
「どうだ?」
「お、待ってたぞ。お腹ユルユル侍」
ヘンな名前をつけるな。ダサすぎるわ。
「ゆっくり服を選んでるよ。やっぱり彼氏か?ワンチャン二人が兄弟という説も」
「さすがに彼氏だろ」
「だよな~」
海の全身の力が抜けていく。もうイスに首と腰で座っている。絶対に腰と首が痛くなるやつだ。
海は逆再生するかのようにヌルッとイスに座りなおして、言ってきた。
「まだ確定してないから、うん。てかこんな情報下手に送れねえよ」
澪様見守隊に澪様に彼氏がいました!・・・間違いでした!すみません!
まず、彼氏がいましたの部分でやばい。間違いでしたは海でもリンチされそう。絶対に過激派がおる。
「で、兄弟っているの?」
「ふっ、澪様見守隊恒例の澪様知識テストオール満点の俺に聞いているのだな。兄、姉一人ずつだったはずだ。しかし、二人とも東京でバリバリ働いている。兄弟仲は不明だ」
澪様知識テストってなんだよ。お前らはほんとに何をしている?
メガネもつけてないのにスチャってやるのやめろ。キモイ。カッコいいと思ってる?
「くそっ、なんで俺は澪様の親族の顔も覚えていないんだっ!」
一回止まろう。止まってくれ。海、お前はいつからそんな奴になった?聞いちゃいけない性癖聞いちゃったみたいで気まずいよ。
空手の全国で負けた時より悔しがってない?
「ついてくぞっ」
服屋を出て隣り合って歩いていく。澪はしきりに男に話しかけている。
澪の手は男の手に絡みつき恋人繋ぎへとなり肩と肩が寄り添う。二人の間に隙間はない。
「こりゃ、確定か」
海と俺は息を合わせたかのように足が止まった。
美男美女のお似合いのカップル。淡い希望はやさしい握りつぶされる。大学内では祝福と呪詛が飛び交うことになりそうだ。ため息がまた二つのこぼれる。
澪の手は柔らかいか?その純白を纏ったかのような肌は温かい?自分の爪が手に平に食いこむ。心が痛い。誰のせいだ?
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