第13話

私は最低だ。


私の中の天使が怜のアパートの部屋の前で脳裏をちらついた。


刹那ほども足が止まることはなかった。


道中にあった私たちに明るいテンションはなくなり、どこを見ても置かれている本たちが音を殺していく。怜が視界に入るたびらしくないと分かっていても体はこわばっていく。


怜の部屋としては想像通りの予想通り。しかし、違和感もある。男子大学生にしては部屋が綺麗すぎるからかもしれない。


気になる本の背表紙に指がかかったとき、背中からお腹に怜の腕が回ってきた。骨張ってゴツゴツとした手。私と本が影で黒く塗りつぶされる。炎と氷が混ざっていく。


天使はもうとっくにいなくなっていた。あの声は雑巾を絞ったときの最後の一滴みたいなもの。悪魔の息も手もこんなにも温かい。


倫理については理解している。けど、実感は湧いてこない。


あるのは溢れる感情だけ。燃えて、燃えて、体すべてを包みこむ。


後ろを見れば、絶世と呼んでいい、完璧な顔がすぐそばにある。ゆっくり、ゆっくり近づいてきて私は目をつぶる。柔らかい感触が口に伝わる。接吻キスをした。


甘い、甘い。子供の時に初めて食べた綿あめみたい


・・・そして、熱い


怜の手をとってベッドに向かう。


ベッド前で怜と向かい合う。


怜の首に両手を回す。怜の眼に私が一面に映っている。はは、この間近に迫った顔は慣れないな。このイケメンやろうっ。


一回、二回・・・ぷはっ、三回目。


甘すぎる。こんな甘いことがあっていいの?


いや、逆だ。私は今、堕ちているんだ。悪魔に誘われて奈落の底に向かって私は堕ちていってる。


甘い、甘い地獄に。


あなたのせい、ねぇ、怜。


私はベッドに寝ころんだ。あなたの番。その綿あめみたいな唇を味合わせて。それを味わえれば食べちゃってもいいから、魂なんてもう取られてるしね。


それとも焼く?焼いたほうがおいしくなるかもしれないよ。地獄に業火に焼かれてるみたいに体も熱い。きっと痛いなんて思わない。


あなたは大丈夫?あなたの体も火傷しそうなくらい熱い。悪魔だから平気だったするのかな?


「好き」


















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