第12話
ちがうぅーー!!
断ってほしかったの!
毎回毎回会うたびにご飯行こうって誘ってるのに断ってきたくせに。最近なんて聞きすぎて即答!こっちすら見なくなってさ!ほんとにぃ!!分かってるの!?話題を増やすために本だっていっぱい読んでるしさ、退屈してないかなって話振ってもうんとかすんしか言わないし!こっち努力も知らないくせに!本みたいに全部書かれると思うなよ!バァァーーーーーーカァァーーーーー!!
「どこ行くの?」
「・・・あ、え~普通に酒井食堂とかでどう?」
安い、うまい、多いの大学生の大変助かる食堂だ。迷ったらここ行っとけっていうお店。お持ち帰りもできるから朝ごはんの心配もなくなるし。
「怜はお酒飲める?」
「まだ誕生日迎えてない」
飲めないと。浪人なしで入ったら大学二年生の時にお酒が飲めるようになる。人生で一番年齢マウントとれるときかもしれない。それをしたら子供っぽさの証明にもなるけれど。
「お酒っておいしいの?」
「まずい、苦い、体に悪い」
安い、うまい、多いみたいに言ってみた。実際にそうだ。それに苦いのをおいしく感じるのは舌が老化?劣化?しているかららしい。知らんけど。
「飲んでみたいの?」
「どんな味か知りたい」
「ちょっとくらいなら飲ませてあげる」
ちょっとくらいなら大丈夫でしょ。酔った怜も見てみたいけど捕まっちゃうから。
酒井食堂は大学から徒歩十分もかからない。
私は生姜焼き定食、怜はから揚げ定食だ。あとビールも一つ頼んである。
怜は私の倍以上のスピードで食べ進めていく。私のほうが口数が多いからかもしれない。
「怜って案外いっぱい食べるんだ~」
「から揚げはおいしいから」
食べている口を手で隠しながら怜が答えてくれた。もぐもぐしてゴクン。
怜にしては珍しく口角がはっきり分かるくらい上がっている。かわいい笑顔。ずるい。怜はそんなことは知らないと言わんばかりにまたから揚げに箸を伸ばす。彼女になれたらこれも日常だったのかな。
「そろそろビール行っちゃう?」
怜は恐れもなく、飲みなれているかのようにグラスを一気に傾ける。
怜はビールとぱちぱちと目を合わせた後、話し合いは成立したのか無言で私に返してくる。味はから揚げで口直ししている所をみるとお気に召さなかったらしい。・・・私も頑張ってこれを処理するとしよう。
「怜に部屋ってやっぱり本だらけなの?」
怜は図書室では本を借りない。大体私が図書室に行けばいるのだから自分の本も相当ありそうだ。ちなみに私は図書室の本で十分。本です買うのはマンガぐらい。
「見に来る?」
「へ?」
怜は言っている意味が分かっているだろうか?二人きりで男の部屋に上がるなんて中学生でもないのだから、起きることは決まっている。わかった!怜は実家住まいなんだ!
「いきなり行ってうちの人に迷惑じゃない?」
「一人暮らしだから大丈夫」
怜の無表情がホントに嫌いになってきちゃう。はぁ、怜の感覚を私が読んでうまくいった試しがないし。すでにこの状況が予想外だし!こうなったらもう怜についていこう、いくんだ!!
「じゃあ、お邪魔しよっかな」
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